ファンタジーとジェンダー/高橋準/青弓社

ファンタジーとジェンダー


"男装の麗人"について述べているところで、何の前触れもなく類例に葛西伸哉熱死戦線ビットウォーズ』を挙げるガチっぷり。できておる喃。


00年代に入ってから、有名なタイトル(本文では書かれてないけど、注釈に『スレイヤーズ』『オーフェン』とあり)が立て続けに完結してしまって、「一つの時代が終わりましたねえ」とファンタジー好きの卒業生と話していたところ、同僚の女性から「えーむしろファンタジーは今が旬ですよ。これ読んでみます?」と『ハリー・ポッター』を渡される。ああ、あの卒業生の言うファンタジーとこの女性の言うファンタジーとは違うものなんだな、と実感した、というくだり(本書が手元にないのでうろ覚え)に妙に共感するところが(笑)


指輪物語』『ハリー・ポッター』『ベルガリアード物語』などに加え、個人的には馴染み深いのだけどこの手のファンタジー論ではスルーされることの多い(と言えるほどこの手の本を読んでいないけど)ヤングアダルト/おらが村のライトノベル/和製ファンタジーである『グイン・サーガ』『十二国記』『破妖の剣』『エフェラ&ジリオラ』なども絡めて話を展開していたので、入っていきやすかった。日本におけるファンタジーというものについて、70年代に翻訳物が大量に出てハヤカワ文庫FTが創刊され、国産ヒロイックファンタジーグイン・サーガ』に至り、80年代終盤〜90年代前半にはCRPG/TRPGなどと結びつき『スレイヤーズ』など日本独自の流れを作り、90年代終盤からは『指輪物語』『ハリー・ポッター』など、児童文学系ファンタジー復権とCGの発達による映画化ラッシュ、というのもすんなり受け入れらた。


内容について詳しく述べるとこちらのボロが出そうなのであまり触れないけれど、一つだけ。陽子のヘテロセクシャルなアレコレについては、前慶王が景麒を好き好き大好きで国を傾けてしまったことが、私には暗い影を落としているように見えるのだけど、どうかなーと思った。ま、陽子に限ってそれはない、とは思うけど、ちょっと気になったのだった。つーか、景麒の頑迷さ(笑)が問題だと思うのですよね。


取り上げられている作品などについてはこちらが詳しいです。