なんて素敵にジャパネスク/氷室冴子/集英社コバルト文庫

なんて素敵にジャパネスク ―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(1) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫)


言わずと知れた大ベストセラー。wikipediaによるとシリーズ10巻累計で720万部ということで、コバルトでも一番売れたシリーズってひょっとしてこれなのかね。小学生の時、同級生の女子が読んでいたのを覚えている。


さくさくと気軽に読めるけど、時代考証とかもしっかりとしてそうなところが侮れない。20年以上経過した今でも色褪せないのは、まあ平安時代京都を舞台にしているからというのもあるんだろうけど、名作だから、と言い切っちゃってもいい気はする。収録されている三篇の内、一つだけ長編並の分量のものはサスペンス風味が強くなっているんだけど、願わくば恋愛模様の方を忘れないでいてほしいところ。


ところで。平安時代に流行していた貝合わせ、というフレーズが出てきてあっちの意味しか思いつかなかった自分は死んだ方がいいですね。そういえば高校の古典の授業でそんなの習ったような気も……。

ある時期から、
「瑠璃姫はもういいかな」
という気持ちになっていて、なぜ、そんなふうに思うのか自分でもわからないまま、いつのまにか続きを書かなくなっていました。
シリーズ物を書いていると、主人公がいつも同じ失敗をしているのはバカみたいに思えてくるし、人間としても成長してほしい「欲」みたいなものが出てきてしまいます。
少しは大人になってもらおうとしたり、欠点がなくなってほしいと親心みたいな気持ちになったりして、気がつくと、なんだか道徳的になってしまいそう。
でも道徳的な物語の主人公くらい詰まらないものはありません。少なくとも私はあまり好きではないから、とても困ったものでした。
瑠璃姫にヘンに物のわかった大人になってしまわれるのが嫌で、でも物がわからない大人になられるのはもっと嫌です。
それでいつのまにか続きを書かなくなってしまったような……。


新装版あとがきより