『エヴァンゲリオン』という作品と、そのファンの10年間
http://animeanime.jp/biz/archives/2007/09/1_6.html
http://www.famitsu.com/anime/news/2007/09/03/681,1188806434,77483,0,0.html
http://popper.blog70.fc2.com/blog-entry-150.html
http://eiga.com/ranking/show/1066
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が予想以上に好評で、驚いている。9月1日(土)、2日(日)の観客動員は23万6000人、興行収入2億8000万円。100スクリーン以下の公開での初の興行成績1位を記録したらしい。この数字がどれだけ凄いかは素人の私にはピンと来ないのだけど、では旧劇場版はというと、こちらによると、3月15日(土)公開の『シト新生』は初日観客動員数が15万人、同じく興行収入が2億円。7月19日(土)公開の『EOE』は初日観客動員数が15万人、こちらは興行収入は発見できず。上映館数の違いなどもあり一概には比較できないが、十分すぎる出だしのように思う。初日を映画の日に持ってきたことがどう働いたのかは分からないが、「今更エヴァもなあ……でもちょっと気になるなあ……」という人を後押しする一因にはなったんじゃないかと思う。
『EOE』から現在に至るまでの10年、『エヴァ』を取り巻く状況は明るいものではなかった、といちファンとしては感じる。主人公の内面救済に徹したTV版最終回を受けての劇場版の、これまた賛否両論(というか"否"の方が目立ったように個人的には思うけど)を呼んだラスト。「現実に帰れ」というメッセージが功を奏したのかは別として、多くの人間があの時点で急速に熱狂から醒めていった、と記憶している。監督・庵野秀明が『彼氏彼女の事情』の後、実写作品に傾倒し、アニメ業界から半引退状態であったこと(実際は『キューティーハニー』などちょこちょこやってたけど)。同じように、当時と比べメインキャスト陣が三石琴乃、立木文彦などを除いて第一線から退いていること。近年のGAINAX社作品の評判。そして、ゲームなどの関連商品の評判。製作側としては『ガンダム』のような長く愛されるコンテンツとして成長させていきたかったのかもしれないが、その試みはお世辞にも成功しているとは思えなかった。貞本義行の漫画版がいまだに売れ続けていても、パチスロがどれだけヒットしても、実感、というものが湧かなかった。経済は社会の基本、人気はおまんまのバロメーター、とは言え……。
滝本竜彦のあの自虐なども、『エヴァ』という作品、ひいては『エヴァ』にはまった自分が既に過去のものである、という共通認識が成り立っているからこその芸風だろう。そう思っていた。
そこに来て、今回の劇場版だ。少なくともwebのオタク界隈での前評判が高くなかったことは、断言できる。広告の多さに反して、内容のネタバレが少なかったことも一因なのかもしれない。それは、公開前日深夜の時点で、都内の、インターネットで指定席を事前予約できる劇場の初回席がまだ空いていた(俺調べ。興味ある人はエヴァ板の過去ログでも)ことからも想像がつく。アニメ実況をしていてCMが流れても、「今更」「もうエヴァはいいよ」という書き込みばかりだった。
だが、蓋を開けてみれば、この出だし。webでの前評判が高くなかったのにも関わらず、ということはつまり、自分に実感がないだけで、この10年間におけるパチスロやその他関連商品の発売が、それだけ新たな層を取り込んでいたのか。既にアニメを卒業していて(もしくはアニメの中でもエヴァだけが好きだった)、自分の把握しているweb上のコミュニティに属していない人たちが観に行ったのか。その辺りはまだ納得できる。では、当時を体験した、web上でのオタクコミュニティの絶賛はどういうことなんだろう。いや、正確に言うと、手放しでの絶賛の声は、そう多くない。大体が、TV版1〜4話に当たる部分は退屈で、5/6話、ヤシマ作戦に当たる部分のグレードアップを評価するものだ。しかし、それにしても、『エヴァンゲリオン』という作品は『EOE』で一旦完結し、あの時点で補完されなかった人間は、それぞれに補完される道を、自分なりに模索したのではなかったか。この10年間で、多くの人間は、その答えを見つけ出したはずだ。結果、『エヴァンゲリオン』は過去のものとなった。それが、こうも容易に覆されるものなのか。別に批判しているわけではない。自分だってその一人だ。しかし、大いに驚いてはいる。
これから、『破』『急』『?』と進むにつれて、どのような展開になるのかは分からない。「エバーに取り憑かれた者の悲劇」は、今回も悲劇のままに終わるのか。それとも……?
映画の感想はまた別個に。