ドラキュラ戦記/キム・ニューマン 梶元靖子:訳/創元推理文庫
前作でイギリスから追放されたドラキュラは、今度はドイツの皇室に潜り込んだ。30年かけて軍の最高司令官の座を得るに至った伯爵は、第一次世界大戦において人々を混乱の渦に陥れる。
ドラキュラがヴァン・ヘルシング教授との戦いに勝利し、大英帝国女王の配偶者となっていた、というifの世界を描いた『ドラキュラ紀元』の続編。あー今回も面白かった。今度は戦争だ!ってなもんで、血沸き肉踊る展開になってます。不死者を戦争に投入、というその界隈の人にはお馴染みの妄想満載で、中でも高速かつ高機動を実現した飛行吸血鬼部隊と、確かこの戦争で初めて実戦配備されたはずの戦闘機との空戦は見物。スプラッターな描写も度を増していて、吸血鬼の女性がストリップと称して文字通り自分の生皮を一枚一枚剥いでいって(でも不死者なので平気)、その下の肉や骨を客に見せ付ける辺りはぞくぞく来ると同時にちょっと気分が悪くなりました。
今回のヒロインは、吸血鬼になっても近視が治らないというヒラコー辺りが泣いて喜びそうなメガネっ娘ジャーナリスト、ケイト・リード。地味な自分にコンプレックスを抱いている点が、「ニューマン分かっておる喃」って感じですが、前作のヒロイン、16歳にして転化して以降400年以上生き長らえている、みんな大好きババアロリ吸血鬼・ジュヌヴィエーヴがいないのはちょっと寂しい。けどまあ、これは3作目に期待しときましょう。あとは、今回どちらかというと最初から最後まで群像劇っぽくて、前作みたいなラストへの収束感がなかったのも不満といえば不満でした。