聖エルザクルセイダーズ(1)〜(4)/松枝蔵人/角川スニーカー文庫

聖エルザクルセイダーズ集結! (角川文庫―スニーカー文庫)

終結!」「激動!」「聖戦!」「乱入!」の全4巻。


聖エルザ学園は国内有数の名門校だが、学園長が死去して以来、不吉な暗雲が漂い始めていた。両親から聖エルザを救うようにと言われた5人の生徒が、これに立ち向かう。


サクサク進む展開、破天荒なキャラクター、荒唐無稽なお話と、これぞティーンズノベルって感じで面白かった。場面場面で語り手の視点があっちのキャラこっちのキャラとポンポン変わっていく手法が、テンポのよさと、終盤に向かって緊張感が高まっていく空気を生み出していると思います。特に2巻終盤は怒涛の展開でしたね。登場人物がやたらいやーんな目に逢うのも、サービス精神旺盛で良。なんか当時のスニーカー作品を読む度にこれ言ってる気がしますけど、おおらかな時代だったんだろうなあ。


ただ、やっぱり年代ものなりの不満はありました。別に、この辺の地層自体には特に抵抗ないんだけど、学生運動がどうした受験戦争がどうしたって話がいまいちピンとこない。後者は、自分が高校-大学と進んだ当時には既に全入時代なんて言葉も出てきてて、比較的ゆるゆるだったからなあ。それとも自分の環境がゆるかっただけか。前者は、多分、中途半端に知識がついたのがよくないんだろうな。同じ学生運動の話が出てくる『ぼくらの七日巻戦争』(そういえばこれの映画版も『聖エルザ』1巻も88年だ)は、小中学生くらいの頃に読んで、ゲバ棒がどうした安田講堂がどうしたーとかやっぱりピンと来なかったけど、分からないは分からないなりに楽しんでたもんなあ。当時の情勢は知ってるけどその場の熱狂に居合わすことはできなかったもどかしさ、みたいのが壁になってるのかも。いや親世代の話として学生運動が出てくるだけではあるけど、それを何の疑いもなく受け継いじゃう主人公の人たちの熱気がどうにも。ここら辺はむしろ、うちらより下の世代の方が受け入れやすいのかもね。なんといっても学園物が今は元気だし、格差社会云々といった世情もあるし。


あと、最後までコックリさんの立ち位置が掴みきれませんでした。長いこと女子校だった聖エルザに突然闖入してきた異物としての男性、というポジションは分かるんですけど。なんろうな、なんか引っかかる。


Black Pointこと伊東岳彦こと幡池裕行のイラストは、なんとも懐かしいと同時に、すげえ心にしっくりくる感じで。なんだろね、この人の作品でちゃんと触れたのって『リューナイト』と『アウトロースター』くらいしかないはずなんですけど、何故か原風景として記憶にとどめられてるってのは。自分的に、似たようなパターンとしてはうたたねひろゆきとかなんですけど。彼らがブレイクした後、彼らを模倣した人たちが出現したから、なんか時代的な絵として認識してる、とか?

関連

学園案内 分類表
http://www.light-novel.com/report/rep3gakuen.html


ライトノベルの主流がファンタジーから学園物に移ったのはいつか?
http://d.hatena.ne.jp/taron/20070124#p3


特殊な学園(物)の設定
http://d.hatena.ne.jp/megyumi/20060521/p5