後宮小説/酒見賢一/新潮文庫

後宮小説 (新潮文庫)


先帝が崩御し、新しく即位する皇帝のために後宮が再構築されることになった。後宮がなんであるか知らない田舎者の銀河は、三食昼寝付きの生活ができると聞いて、これに立候補する。アニメ化もされたらしい第1回ファンタジーノベル大賞受賞作。


実際に銀河という女性が過去にいて、彼女について当時書かれた様々な文献が存在して、現代人の筆者はそれを元にこの文章を書いている、という体裁が面白かった。異世界ファンタジーの場合、例えば主人公が現代の人間で、偶然異世界に彷徨いこんだけど分からないことだらけだったり、『十二国記』の場合なんかはそれに加えてあちらでの言語を文章の上でも再現することで読者に「こっちゃ来いこっちゃ来い」と要請したりと、色んな手段で読者とその世界との距離感をはかってると思うのだけど、この小説の場合、現代人の著者がそのまま読者の視点に立つことで、読み易いし話を理解しやすい。と同時に、著者自身が「この登場人物は好ましい」とか「ここはこういう展開になってほっとした」といったように話にツッコミを入れる辺りは、なんだか不思議な感覚を味わうことができました。


あと、まあそもそも新潮ファンタジーノベル大賞がボーダーに位置してるってこともあるんだろうけど、キャラクターが立っててライトノベルとの親和性高いですよね。こういう騒ぎ方はちょっとあんまりよろしくないけど、今出したら絶対ツンデレツンデレ言われそうな人とか、不思議少女とか。その割にここぞという時のキャラクターの扱いはライトノベルからはかけ離れてて、冷淡というか、超然としてる、というか。やっぱり、なんだか曰く言い難い何かがある気がする。


ただ、房中術の勉強をする際、身体部位の名称を覚えるのにあたって筆でその身体部位に直接文字を書いていく、ってのはちょっと悪乗りしすぎだと思います(笑)


それで、ラ板の該当スレを見てたら

79 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/05(日) 12:38:30 ID:rCAtFeXs
たしか何かの文庫の後書きでカミングアウトしてたような気がするんだが、
DOS時代からの気合の入ったエロゲーマーらしいので
ラノベ方面の水が合わないということは無いと思うんだが。
マジで来てくれんかのう。


81 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/04/09(日) 22:03:14 ID:PWWfJhuT
>>79
「聖母の部隊」だな。思いっきりYU-NOオモスレーって後書きで書いてたのは。
ピュタゴラスとか語り手みたいなメタの方向はあまり好きじゃないんだが、
この人の冒険活劇はホント面白いからなぁ。ラノベではっちゃけて欲しい。

http://book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1102241309/79-81


……あー。なんか、こういう話を書く人がああいう話を褒めるってのは、なんとなく納得な気もする。メタメタな構造とか。こっちのが遊び心とか、洒落っ気とか、そういうものは強いので、受ける印象は全然違うけど。でも、しかし、世界狭いなあ。


どうでもいいけど、つい最近まで「後宮」って「こうぐう」って読むもんかと思ってました。