桜庭一樹と近年のライトノベル内外の流れ

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet


『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』文庫版の売れ方を読んで、なんとなく。過去ログを頼りに当時の曖昧な記憶を辿ってみるなら……

  • 1999/12:第1回えんため大賞受賞作『AD2015隔離都市―ロンリネス・ガーディアン』発売
    • 当時は私自身がネットに触れていなかったのでなんとも言えないけれど、何年か前にぐぐって見た限りでは、この時点では特に話題になった形跡はない。……ふと思ったんだけど、吉川英治文学新人賞取ってたら、えんため大賞は第1回でそれを輩出した新人賞、ということで箔がついたのかな。
  • 2001/09:『EVE TFA―亡き王女のための殺人遊戯(デス・ゲーム)』発売
  • 2001/12:『ルナティック・ドリーマー』発売
  • 2002/01:『君の歌は僕の歌―Girl’s guard』発売
  • (2002/02:西尾維新『戯言』シリーズ開始)
  • (2002/07:乙一『GOTH リストカット事件』発売。第3回本格ミステリ大賞受賞)
  • 2002/07:『獅子たちはアリスの庭で―B‐EDGE AGE』発売
  • 2002/08:『竹田くんの恋人―ワールズエンド・フェアリーテイル』発売
  • 2002/11:『獅子たちはノアの方舟で―B‐EDGE AGE』発売
  • 2002/11:『学園都市ヴァラノワール―未来は薔薇の色』発売
  • (2002/11:『灼眼のシャナ』シリーズ開始)
  • (2002?/?:『マリア様がみてる』ブーム。シリーズ第1巻は1998年4月。久々にライトノベルオタク文化の話題の中心に。コバルトを狭義のライトノベルに含めるかってのはまた別の議論で。この辺参照)
  • 2003/01:『赤×ピンク』発売
    • なんか妙なものを書く人が出てきたぞ、という噂をちらほらと聞き始める。私が最初に買ったのもこれ。ただ、この時点ではまだまだ一部が注目している以上にはならなかったと思う。
  • (2003/03:村山由佳『星々の舟』発売。第129回直木賞受賞)
  • 2003/05:『ジェネレーション・オブ・カオス〈3〉時の封印』発売
  • (2003/06:谷川流涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ開始)
  • 2003/08:『555(ファイズ)』発売
  • 2003/08:『EVE burst error PLUS―サヨナラキョウコ、サヨナラセカイ』発売
  • 2003/12:『GOSICK』シリーズ開始
    • 月刊ドラゴンマガジンの『龍皇杯』という企画に参加した作品。そちらは残念な結果に終わってしまったものの、刊行を重ねる内、富士見ミステリー文庫を代表する人気シリーズに。イラストの力もあって、1、2巻辺りから既に結構人気はあったと思う。
  • 2005/03:『このライトノベル作家がすごい!』にて地方都市シリーズの全貌が明らかに。
  • 2005/05:『荒野の恋』シリーズ開始。
    • GOSICK』ほどシリーズとしての華があるわけでもなく、『砂糖菓子』や一般文芸作品ほど話題になるわけでもなく、地味だけど、こういうのが書けるってことでまた世界を広げたと思う。
  • 2005/07:『すたんだっぷ風太くん!』発売
  • 2005/09,10:『少女には向かない職業』『ブルースカイ』で一般文芸進出。
    • 少女には向かない職業』は、その前から読んでる人の中では、一般文芸に行ってもあまり変わっていない、という意見も多かった。
  • 2005/11:桜坂洋と文学フリマに参加。
  • (2006/02:有川浩図書館戦争』発売。2006年本屋大賞受賞)
  • 2006/03:『桜庭一樹日記』発売。
    • 元々あとがきが面白いという評判のある人で、流れ的には自然な気も。でも、これ以降は、ライトノベル界隈ではこういう形での露出というのは逆に減った気がする。一方、一般文芸ではインタビューや対談などが増える。
  • (2006/04-:『涼宮ハルヒ』ブーム)
  • 2006/05:gyaoにて『少女には向かない職業』ドラマ化。
  • 2006/07:『少女七竈と七人の可愛そうな大人』発売。
    • 独特の雰囲気。装丁に惹かれて手にとったら当たりだった、という人も多い様子。
  • 2006/12:『赤朽葉家の伝説』発売
    • 現時点での桜庭一樹の最高傑作と煽られてるけど、実はまだ読んでない。ファン失格。同作品は吉川英治文学新人賞の候補になるも、受賞は逃す。
  • 2007/02:『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』ハードカバーに。


えーと、長々と書き綴ってきましたが、何が言いたかったのかというと、確かに『砂糖菓子の弾丸』で桜庭一樹は有名になりましたけど、何も彗星のように突然現れたわけじゃない。『AD2015隔離都市』があって、『赤×ピンク』があって、『GOSICK』シリーズが開始して、とどめに例の三ヶ月連続刊行があったからこそ『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』も売れたんじゃないかなあ、ということなのです。あと、ライトノベルというものへの外部からの注目が集まってる時にうまくその流れに乗ったのも後押ししてると思う。


まあ、偉そうにこんなこと書いてる私も、実はノベライズなど一部作品が未読なのでアレですけどね。


なお、ライトノベル内外の流れは何かの参考になるかな、と思って入れただけで、別に歴史を包括的に語ろうとかそういうつもりは全くありません。お手柔らかに……。

おまけ 各作品のgoogleヒット件数(2007年3月9日現在。いずれも作者名「桜庭一樹」を付与)


……『ブルースカイ』すくなっ!まあ結構賛否両論の出来ではあったけど、それなりに注目の集まってる時期の作品でここまで極端に少ないとは……。googleのシステムの問題かなんか?語り口がいつもと違って硬かったのがよくないんだろうか。そして『すたんだっぷ風太君』の異常な知名度