少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹/角川書店

少女七竈と七人の可愛そうな大人


発売から4ヶ月程度。今回、これだけ読むのが遅れたのは、『GOSICK』以外のモチーフを同じくする作品を立て続けに消費して、飽きてしまうのを恐れたのだけど……正直、まだまだこの人を侮ってました。


帯に記載されている煽り文句の刺激的なイメージは、いい意味で裏切られました。もっとこう、社会経験の薄い20代毒男には想像もつかないようなドロドロした世界を描いているものかと。いや、それは決して間違いではないんだけど、「顔」を「かんばせ」と表記するような古めかしい文章のおかげか、なんとも言えない雰囲気がありました。特に、ヒロイン七竈と幼馴染の雪風(!)が。作中の旭川もなかなか現代日本とは思えないようなところがあるけど、それでも住んでいる人たちは私たちとそう変わりません。でも、この二人は周囲に理解されない異質な世界を作ってる感じ。


というか、この二人の口調ってのは、二人だけの閉鎖的な世界を作って周囲を跳ね除けるとかのためだと思うんですけど、そんなこと関係なく、ラノベでも通用するぐらい七竈のキャラは立ってると思いました。桜庭ヒロインでは、ヴィクトリカの次くらいに好き。奇人変人だからなに?という雰囲気がぷんぷんと。鉄道模型が好きで好きで抱いて寝るようなコですよ。雪風が真っ赤なマフラーの色を「七竈の実の色だ」と喩えたと聞いて頬を染めるところとか、普通に可愛い一面もあるし。表面的な楽しみ方ではあるけど、頭いい感想は他の人が書いてるので、一人くらいこういうこと書く馬鹿がいてもいいんじゃないかと。つうか、そこら辺を指摘する人がいないのが不思議だ。はあ、七竈と渡良瀬渓谷鉄道に乗りたい。


これで桜庭を知った人は、『荒野の恋』(isbn:4757722893)が色々と対になってるので、そっちも読みましょう。母と娘とか、家の内にいる女と外に出てく女とか、血縁度とか。雰囲気は全然違うけど、オススメ。


そういえば、今月すぐに『赤朽葉家の伝説』が出るわけだけど、文中にあった「赤いまま朽ちる、七竈の実」ってどっかに繋がるのかな。楽しみだ。


赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説