悪魔の辞典/アンブローズ・ビアス 西川正身訳/岩波文庫

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)


これ、知名度がどの程度かってのがちょっと分からないんですが、この辞典をもじった書籍も幾つか出ているし、私も名前は何度か耳にしたことがあるので、結構有名みたいですね。風刺とか機知とか皮肉とか社会を斜めから見たアレコレの用語集。表題のような悪魔の名前がずらりとと並ぶような辞典ではありません。あんまり一気に読むものではないですね。5分、10分の電車の待ち時間とかにちびちび読んでました。

懐古(reminiscence n.)


不仕合わせな人々に許された最高の贅沢。

喉仏(Adam`s apple n.)


絞首索が外れないようにと、造物主が思慮深くも用意して下さった、男性の喉に見られる突起。

流行(fashion n.)


賢者が、嘲笑しながらも、その命に従う暴君。


こんな感じのが延々と1000語ほど並んでいます。こちらで、有志の方による翻訳がかなりの数読めます。


ところでこの作品、多分多くの人がそうであるように、私にとっても言葉遊びを楽しむジョーク集に過ぎません。その内容が真理を突いているかどうか、というのはあまり重要ではないんですが、解説を読むと当のビアス本人は、偏狭的でエゴが強かったとか、結構な言われよう。アメリカの文明に望みを絶ってメキシコに逃亡したり、わりとガチな人だったんですね。まあ、当人の意図に批判的な精神が強かったにせよ、諷刺的な面白さが失われるわけではないけど……うーん。

言葉を疑わぬ人には、『悪魔の辞典』は、疑わしい言葉とはどういう言葉かを知るための字引。だが、言葉を信じない人には、信じられる言葉とはどういう言葉かを知るための字引きだ。


まあ、そんな感じ。