GOTH 夜の章・僕の章/乙一/角川文庫

GOTH 夜の章 (角川文庫)GOTH 僕の章 (角川文庫)


高校生の主人公とそのクラスメイト・森野夜は、どちらも「普通」とはかけ離れた生き方をしているという点で共通していた。それで、彼らは世間の猟奇的な事件についてよく話すようになる。第3回本格ミステリ大賞受賞作。


……えーと、まず、感想を挙げる前に一言。上下巻の内、下巻から読んでたことに、読み終わってから気付きました……OTZ。そもそも素直に上下巻と書いてくれればいいものを、「夜の章」「僕の章」なんて回りくどいタイトルつけるから悪い。というか、そんなにページ数ないんだから1冊にまとめてくれればよかったんだよ!と出版社に責任転嫁してみる。ま、連作短編だし、発表順=作品内の時系列というわけでもないから、順番通り読まなくてもいいような気もするけど(実際、ハードカバー単行本のと順番違うし)、そういう読み方をしましたよ、ということで。


さて、デビュー作「夏と花火と私の死体」もそうだったけど、相変わらず気持ち悪い小説でした。怖い、じゃなくて気持ち悪い。どんなに盛り上げるべきシーンでも全く変わらないフラットな筆致が気持ち悪い。今回は、それが主人公のキャラクター確立に一役買っていたように思います。一人称で全く語り手に感情移入できないってどういうことよ。ここらへん、あとがきで作者が「登場人物は人間でなく妖怪」「異世界を髣髴とさせる設定やアイテムや用語を使用していないので分かり辛いけど、これはおとぎ話のようなもの」と主張しているのと繋がるのかな。以前、橋本紡が「sfでもファンタジーでもないし、超常要素もないよね。こういうのはね、ライトノベルじゃ売れないんだよ」と言われたらしいけど、これがライトノベルのそういう偏見に対する作者なりの解答なのかもしれません。語り手の内面描写をまるでしないから、読者には彼の内面がまるで理解できない。彼が人外の存在であることが文中で殊更に説明される(それこそライトノベル的に)ことはないけれど、結果、彼はそういう、人間には理解できない存在として描かれている。分かりやすい誇張表現をしてナンボのライトノベルであえて誇張と言うのを全くしないことで生まれる個性、とかなんとか。……でも、ヒロイン森野さんのキャラは後半わりと類型っぽいですけどね。「声」とかどんなツンデレヒロインだよ。


ちなみにこれ、六編の内二つは「ザ・スニーカー」に掲載してたらしいです。その時にはイラストがついてて、それがなんと緒方剛志。……この路線で緒方剛志ってベタ過ぎやしないかい。容易に想像がつくだけに、うーん……。つーか誰にしろ、この作品にイラストはいらなかったと思います。せっかく作者がキャラクター性を削ってるのに、絵にしたら何だかイメージが確立しちゃいそうで。ちなみに、当時のイラストらしきものは緒方剛志の公式サイトで確認できます、が……うーん。


GOTH (角川コミックス・エース)


この大岩ケンヂの漫画版も、わりと好みの絵柄ではあるんだけど、やっぱり別物でしかないんだよなあ。


で、先日出た乙一の新作。これ。


銃とチョコレート (ミステリーランド)

そういえば『銃とチョコレート』は僕の好きだったライトノベルの要素を注入してみました。僕は昔、冴木忍先生の本が大好きで、
『メルヴィ&カシム』シリーズみたいな師匠と弟子の関係で珍道中するやつをやってみたかったのです。『オーフェン』とか『スレイ
ヤーズ』みたいな感じのやつです。僕が読んだライトノベルのほとんどはパーティを組んで旅する話だったのに、これまで自分で書い
てないのはなんででしょうね。今回すこしだけそういうのが書けてうれしかったですよ。


http://maji.tokushori.net/otsuichi/special/special01.htmlより


はてさてどうしたもんか。