蓬莱学園部活編 騎馬っていこう!/新城十馬他/富士見ファンタジア文庫

騎馬っていこう!―蓬莱学園 部活編 (富士見ファンタジア文庫)


短編集第3弾。

幽霊本塁打1号/新城十馬

誰もいないグラウンドで放たれ、観客席のベンチを破壊したホームラン。打ったのは誰か。恒例、名探偵知里しのぶ先生シリーズ。

前にも言ったけど、名探偵に必要な能力とは、論理的思考でもなければ不可能なことを排除していく手順のうまさでもない。肝心なのは想像力だ。

世の中、想像力について勘違いしている人はけっこういる。とくによくあるのが『苦しんだ末に、まったく新しい何かがパッとひらめいて生まれる。それこそホンモノの想像力だ』ってやつ。
バカバカシイったらありゃしない。
無から有が生まれるなんてのは、100年前の欠食詩人がヤセ我慢して唱えてたタワゴトだ。脳味噌は、そこまで便利にできてない。あるのは図柄(パターン)と、その組み合わせだけ。あたしたちにやれるのは、謙虚に頭の中と外を見つめて、基本的なパターンを探すことなのだ。


それぞれは関係ないように思われていた幾つかの事柄が、それぞれに進行していくが、最後には収束する。長編「犯罪」「魔獣」にしてもそうだけど、この人こういうの好きだなあ。ただ、なんだか起こった事件に対してあんまり興味が持てませんでした。

奇跡の三・三・七拍子/賀東招二

予算をかけた応援団とチアリーダー部の勝負。その中身は、各々選んだ学園生徒を応援し、それがどれだけ効果をあげたか、競うこと……。いかにもこの人らしいお話。むさくるしい応援団と華やかなチアリーダー部の対比が笑えます。後のフルメタ短編とノリは同じ。あっちも既に終了してるけど、やっぱりこの人にはギャグも書いて欲しいなあ。

正しい児童文学/賀東招二

怪しげな日本語を操る黒人学生が児童文学に挑戦。……うーん、こっちは微妙に合わなかったかも。色々と。しかしあれですね、作家とか編集とか、そういうネタ好きですね。

騎馬っていこう!/雑破業

表題作。「明るく健全な活動」がモットーの騎馬戦部。彼らの前に突如現れたのは、かつて部内の権力争いに破れ、復讐を胸に隠れ里で修行を積んできた「闇組」だった。勝負を挑まれ、応じる騎馬戦部。しかし、メンバーの一人が怪我をして試合に出れなくなってしまう。そこで投入された助っ人とはなんと女の子の姿をしたランプの魔神だった。


個人的には一番面白かったー。「騎馬戦」という、興味ない人間にとっても遠くなく、さりとて近くもない競技の設定が結構よく考えられてて、よいよい。ちょっと急ぎ過ぎのところもあったので、このネタで長編一本書いて欲しいなあ。場違いなあのキャラは……まあ「ポロリもあるよ!」がやりたかったのかなあ、とは思うけど、別にランプの魔神じゃなくてもいいような気もします。