BLACK BLOOD BROTHERS(5) ブラック・ブラッド・ブラザーズ 風雲急告/あざの耕平/富士見ファンタジア文庫

BLACK BLOOD BROTHERS〈5〉ブラック・ブラッド・ブラザーズ 風雲急告 (富士見ファンタジア文庫)


望月兄弟の来訪、そして<九龍の血脈>の襲撃から1年。とても平穏無事とは言えないし、悩みの種は尽きないが、ミミコは調停員としての仕事に自信を持ち始めていた。だが、そんな彼女を翻弄するかのように特区ではそれぞれの思惑を巡って対立が生まれ、一陣の風が人々を大きく揺るがす。


今回は陣内ショウゴを中心に、社会の中で生きる大人たちがかっこよく描かれてました。ドラッグに浸かりきりのアウトローな若者たちを描いたDクラとは対照的。特に、切れ者である陣内と、その上司でありながら彼の生き方にひそかに嫉妬を覚えずにいられない尾根崎の苦悩がよく伝わってきました。この2人って、序盤で関係が悪化してから、一度も面と向かって話し合おうとしていないんですよね。また十一番地の件にしても、セイやケインが話そうとしないのなら、それ以上追求しようとしない。それらは多分、長年の付き合いから実際に会話せずともお互いのことは理解しているという思い込みと、政治的な思惑から腹の探り合いに慣れてしまったことにもよるものでしょう。そんな彼らが、疑問を包み隠さず上司にぶちまけた若いミミコと対比されているような気がしました。


今回彼らを上回る何かを見せなければならなかった筈の当のミミコはというと、やや弱かったかも。別に嫌いなキャラじゃないし、成長の萌芽は見えるんですよ。ただ、やはり3巻から1年の空白があるせいで、その間の挫折や苦闘をこっちは知らないので、周囲がミミコを「成長したな」と賞賛してもいまいちピンと来ませんでした。この作者は話を進める上で、構成を1巻単位でなく数巻単位で考えているところがあって、例えばDクラなら1―2で一つ、3―5でもう一つ、6−7で終わりとなっています。こういう風にシリーズ全体の構成をちゃんと考えてて、急転直下な展開を描くのがうまい、と言われたりするのですが、今回はちょっと急すぎたかな、と思わなくもありません。


思えば、短編集1巻でミミコが転職雑誌を眺めてたのは、今回の伏線だったんですかね。やな伏線もあったもんだ。