SHINO ―シノ― 黒き魂の少女/上月雨音/富士見ミステリー文庫

SHINO ―シノ― 黒き魂の少女 (富士見ミステリー文庫)


大学生の「僕」のアパートには、毎日志乃ちゃんが訪ねてくる。彼女は小学五年生で、「僕」の幼馴染だ。感情というものを表に出さない彼女が唯一興味を持つのは、人の「死」について。普通でいてほしいという「僕」の願いとは裏腹に、彼女は猟奇殺人事件に首を突っ込んでいく。第5回富士見ヤングミステリー大賞最終選考作。


足りない。全然足りない。何がって、ツンデレのデレに当たる部分ですよ。せっかく無口・無表情の女の子なのに、時折見せる恥じらいとか、嫉妬とか、笑顔とか、赤面とか、そういうのが皆無ってどういうことだ。感情を見せない女の子が好きなんじゃなくて(いや、それはそれでいいけど)、そういう子が徐々に人間らしい感情を取り戻していくってストーリーが好きなんだよう。謝れ、「クールな小学生シノちゃんと大学生の僕との純愛系ミステリー」っていう帯に惹かれて買った俺に謝れ!……って、まあ2巻もあるようだし、シリーズ物の1巻目として考えればこんなもんかなあ、とも思うんですが、単品として見るとややパンチ(=あざとさでもOK)に欠けたのは事実。生活感の希薄な女の子が、生活感満載の独身男性の部屋にいたら、というシチュエーションはなかなかよかったんですけどね。いかんせん、志乃ちゃん本人の魅力がいまいち……。


「肉体が滅んでも、彼が生んだ思想だけはネットーワークで生き続ける」みたいなテーマは面白かったんですが、ラスト、それを地の文で懇切丁寧に説明されてやや興醒め。


イラストは、カラーよりモノクロのが断然好き。カラーの方は、目の下の隈が強調されててちょっと病的に過ぎる。こういう絵柄ってなんて言うんでしょうね。主線が定まってなくて、顔立ちその他がちょっと不健康っぽくて。イラストと言えば、絵師の人のあとがきが……なんていうか……自重してください。


2巻出ても買うかどうかは微妙。そもそも、作品全体に流れる空気みたいなのが生理的に受け入れられなかったので……似てる、と各所で評判の森某は読んでないんですけどね。