真拳勝負!/松谷雅志/朝日ソノラマ文庫

真拳勝負! (ソノラマ文庫)


幼い頃からのライバルとの試合中、掌から紫色の怪光線が出てしまい、相手を大怪我させてしまった。戸惑い、悩む主人公の前に謎の男が現れて、その能力の正体を語る。第4回ソノラマ文庫大賞佳作入選。


昔々、新刊に飢えていたろくごまるにスレにて、ろくごに作風が似ているとして紹介されてたのがこれ。一時は別ペンネーム説も出てたくらい。読んでみるとなるほど、確かに。特に軽妙でテンポよく読める文体、どこか古くさい語り口は似てます。どこかへ理屈っぽい特殊能力の理論づけとかも、似てると言えば似てるかも。この作品の応募時のタイトルが「殴れ!」だったというのも、「封仙娘娘追宝録」が元々は「大始末記」だったというエピソードにこじつけられなくもない。……のだけど、同一人物と見るのは少し無理があるかなあ。この作者が昔、ものかき志望の人が集まるIRCに参加していたとか、そういう過去が見つかるのに目をつぶるとしても、少し王道過ぎるストーリーラインとか、ネタの転がし方とか。どっちかっていうとこの語り口って、関西の人のちょっときつい話し言葉のそれに似ていると思うのだけど、いかがなもんでしょ。この人もろくごも関西出身だし。


と言っても、それがこの作品の面白さに繋がっているかというと、全くそういうことはなくて。ストレートな熱さはろくご作品に見られないものだし、主人公の後輩のボーイッシュな女の子は健気で可愛い。将来が嘱望される作家だ……と思ったのだけど、03年2月に2作目を出してから音沙汰無いらしい。お、おのれ。


・他の人の感想
http://d.hatena.ne.jp/capskana/20050621
http://www2u.biglobe.ne.jp/~muuminn/03310.html