銀盤カレイドスコープ(1)(2)/海原零/スーパーダッシュ文庫

銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream (銀盤カレイドスコープ) (スーパーダッシュ文庫)銀盤カレイドスコープ〈vol.2〉フリー・プログラム:Winner takes all? (集英社スーパーダッシュ文庫)


各所で評判上々、この秋からTVアニメ化も控えている本作。実力は十分、容姿も端麗だけど高飛車で性格に難あり、のフィギュアスケーター、タズサにある日、少年の幽霊がとりつく。喧嘩もしながら、共にオリンピックを目指していく。


主人公タズサの周囲に対する態度は時に度が過ぎていることもあるんだけれど、キャラがたっていてなかなかよかったです。多くの場面で彼女の敵になるのは、普段は関心もないマイナーなスポーツに、オリンピックになると群がってくるマスコミと、彼らに煽られる大衆。また、不幸続きでなかなか結果を出せず、世間に「悲劇のヒロイン」とされているライバルへの同情も、彼女への敵対感を後押しします。そんな中、マスコミにたんかをきる彼女はなかなか爽快です。また、そんな自分の言動に対して後悔はしてもちゃんと取るべき責任は取ってる辺りが、彼女をギリギリ嫌な傍若無人キャラにしないでいる、と感じました。また、ライバルたちの演技を観戦している辺りの心理描写もお見事。


一方で、実際にスケートするシーンは少々期待が高すぎたんでしょうか。この作品はヒカ碁とかと同じで、専門用語の解説なんかをほとんど入れない。読者もルールが分からない。でも、面白い。そういう位置づけなんですが、私としてはもうちょっと説明してくれてもよかったような気はします。それでも、2巻ラスト辺りはそれまで重ねてきた緊迫感もあって、結構盛り上がりました。


それと、これは個人的な疑問なんですが、オリンピックでやるような演目の場合、本人とコーチの一存で変えられるものなんでしょうか。曲を作ってくれた人を説得するとか、謝罪するとか、そういうシーンは欲しかったかな。