文系のための数学教室/小島寛之/講談社現代新書

文系のための数学教室 (講談社現代新書)


甘いタイトルにひかれて読了。数日前に読んだ「大人のための文章教室」とタイトルは似てるけど、内容は一切関係ありません。


そもそも、数学に苦手意識を持つようになったのっていつだったでしょうか。分数という概念が出てきた時だ、という人もいれば、数式をりんごが何個でみかんが何個、といったような具体例にたとえられなくなった時だ、という人もいます。私の場合は、時間・距離・速さの計算で一気に脱落してしまったことを覚えています。


作者の主張はこうです。数学嫌いと数学下手は違う。特に、無味乾燥な数式を暗記するだけの勉強では、すぐに数学嫌いになってしまう。この本では経済学や法学、神学、哲学など文系向けのネタを数学で料理している。この本を読んで、せめて数学の「下手の横好き」になってもらいたい。


小泉首相の「構造改革無くして景気回復無し」という言葉を数理論理的に分析すると、たとえ構造改革が行なわれた結果景気回復がなされなかったとしても、それは選挙公約違反にならない。「狭い日本の国土をもっと広く使うためには、すべての電車の速度を半分に落とせばいい」という発想には、数学的な根拠がある。投票としての多数決が、必ずしも集団としての選好を反映した結果にはならないことは、数学的に証明できる。神の存在証明を数学的におこなう。などなど、たとえとしては興味深いものが多く、面白く読むことが出来ました。


ただまあ、これを読んで苦手意識が克服できたかというと微妙。