性の用語集/井上章一&関西性欲研究会/講談社現代新書

性の用語集 (講談社現代新書)

思春期をむかえた少年が、辞典のなかに助平な言葉をさぐっていく。漢和辞典で、女偏の文字を物色する。あの好奇心が、いい大人になった今でもつづいてるのだというしかない。まあ、共同執筆者のなかには、元少女もおおぜいいるのだが。


一般的な国語辞典で軽視されがちな性的な用語に関して、大量の文献を漁り、言葉の変遷を辿る。「パンツが見える 羞恥心の現代史」がなかなか面白かった井上章一を中心に、数人の研究者によって執筆された用語集。相変わらずこのレーベルはアグレッシブで、タイトルもよく出来た釣り餌が多い。でもこのタイトルでこの色は勘弁な。


例えば「性」「変態」「風俗」といった言葉は、今日では英語で言うところのsexに関する事柄を想起する人が多いものの、元々そういう意味を持ち合わせてはいなかった。では、どのような変遷を辿って現在の意味になったのか。「童貞」という言葉は一時期男女両方に使われていた。「猫をかぶる」という言葉のルーツは、遊郭で招き猫が置かれていたことにある等等……。トリビアっぽい内容がずらりと並んでいますが、項目一つ一つが決しておざなりになることなく、それなりに読み応えあります。やっぱりそれは、この井上章一という人が(この本は項目によって執筆者が違うけど)本当に様々な文献を片っ端から漁るだけの根気と能力を持ち合わせているからこそできることだと思う。そしてそれが、私みたいにこういう話題が好きな「だけ」の人と、こういう研究者の差なんだろうな、ちょっと考え込んでしまう。今回、個人的に一番驚いたのが



この引用。「おめとエス」という項目で、エス=sister=姉妹という関係を描いた現在の人気作品、ってな感じで紹介されてるんだけど、まるっきり不意打ちだったので驚きました。まーそれほど多くの文章量を割かれているわけではないんだけど。


執筆者によって面白みに差があるのが難だけど、面白かった。この調子で第2弾もお願いします。