リリイ・シュシュのすべて
リリイ・シュシュというアーティストを心の拠り所とする中学生たちが援交やいじめといった「いまどき」の問題に絡め取られ、悲劇が悲劇を呼び、時に一筋の光明が見えることもあるんだけど、その光明を掴み取ることは出来なくて、結局陰惨な結末を迎えてしまう。最後まで救いのない、一言で言うなら陰気な青春映画。
2時間半、拷問でした。私はなんというか、救いのないお話、というのはそれはそれでアリなんじゃないか、と思ってます。テーマも何もなくこういうことがあり得るんだよ、とひたすらに痛みを剥き出しにしてる話。最近だと桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」、ちょっと昔だと「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とか。でも、前者だと女性作家特有のフワフワした感じ、後者だと主人公の妄想癖をミュージカルで表現したりと、悲劇以外に惹かれるところがあったのに比べ、この映画にはそれしかない。北関東の田園風景などは映像としては綺麗だけど、それは痛みを引き立てるためのもので、単純に対になってないというか。うまく言語化できないけど。楽しい日常が突然失われて絶望的な状況に突き落とされる。逆に絶望的な状況を乗り越えて幸せになる。そういう、落差みたいのが感じられなかった。途中回想でいかにもノスタルジックな明るい青春映画のようなシーンも挿入されているんだけど、そこにも既に悲劇の兆候が表れていて、素直に「いい青春だなあ」と思うことが出来ない。それと、登場人物の直面する問題というものが1人1人明確に描かれておらず、とても乱暴に「いまどき」の子供の断片ばかり切り取って見せられた気がしたのも登場人物への共感を削いだかも知れません。多分、狙ってやったんだろうけど。
でも、これを単純に嫌いとも言えないから性質が悪い。綺麗、或いは可愛い絵と残酷な話のギャップ、ってのに結局弱いんです。