しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World/上遠野浩平/富士見ミステリー文庫

しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World (富士見ミステリー文庫)
連作短編百合萌え推理小説もどき2冊目。フィアグールとかがいつ出てくるかわりかしビクビクしながら読んでます。
基本的にかどちんの書くキャラってのは悟り切ってる(少なくとも外からはそう見える)人と、それ以外という風に2種類に大別される。特に最近の著作ではその傾向が強くなっている。それはこのシリーズも例外ではないんだけど、しずるさんがなんやら世界の真実みたいなことを語ってもよーちゃんが「ううううう……」ってならず、それまで通りの関係を維持してるってのは一連の上遠野作品群の中では稀、のような気がする。それだけ2人の絆が強固ってことで、つまりはしずるさんとよーちゃんのイチャイチャ最高。流石「合い言葉はLOVE」の富士見ミステリー文庫。それ以外の要素なぞ、この作品では形骸でしかないのです。……というのはいい過ぎだけど。でも、1巻からずっと2人のいちゃいちゃがマックスのまま継続してるんで、3巻辺りでは何らかの障害がほしいところ。
ミステリー部分は、1巻の時は普通につまらなかったんだけど、2巻ではなんかトンデモ推理になってきた?ミステリーに疎いので分かりませんが。4章とか、なんじゃそらーという感じなのだけど、作中でよーちゃんに突っ込ませてる辺り作者も自覚あるんだろうな。これはこれで味があっていいかも、と少し思ってしまいました。
ところでこの作品の百合におきましてはイラストの椋本夏夜に拠るところが非常に大きいと思うのですが。個人的にもこういう絵は好みであります。
余談だけど、この人の感性って基本的に古いですよね。ブギーはよく現代の少年少女云々といった文脈で取り上げられてたけど、当時まさに「現代の少年少女」であった私でさえそう思いました。だって「不純異性交遊」なんて単語が出てくる時点で……1巻のあとがき読む限り、作者も自分の学生時代を回想して書いてるようだし。だから、これが現代の少年少女の悩みを表現してる、というなら作者が学生だった時代の少年少女も同じようなことで悩んでいた筈。でも、だからこそ変に尖ったところがなくて安心して読めるんだな。なんて考えるのは私だけですか?……こういうこと、当時話したかったなあ。