眠り姫/貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫

眠り姫 (富士見ファンタジア文庫)
12月のベロニカ」で第14回ファンタジア長編小説大賞を受賞した貴子潤一郎の短編集。余談ですがライトノベルでこのようなシリーズ物でない短編集が出ることは稀で、それ自体編集部が作者を他の作家とは少し違った扱いをしてる証拠といえましょう。内容に関しては、地の文が多い割に読み易い文章、薄いキャラなど地味な作風は「12月のベロニカ」と変わらず。結構面白かったけど、個人的には何かもう一つ「これだ!」というウリが欲しい。どうにも淡白。表題作の「眠り姫」にしてももうちょっと突き詰めればもっと面白くなるとは思うんだけど。オチがどうにも弱い。「さよなら、アーカイブ」とか取り扱ってるテーマは結構好みなんですけどね。結構作風が完成されてる感があるのでこれからあんまし変わりそうにはないなぁ……ただ、こういう作品はレーベルに必要だとは思うのでDMに読み切りを不定期掲載、という形でも生き残ってもらいたい。幸い引き出しは多そうだし。ちなみに、一番気に入ったのは書き下ろしの「探偵真木」。主人公の語り口が気に入りました。これはシリーズ化して欲しいです。

そういやあとがきで作者が「汝、信心深き者なれば」について作者が「ここまでイヤらしい話を書いても大丈夫なのか」と書いてましたが、「デビル17」に比べれば全然可愛いもんだよなあ。