無理は承知で私立探偵(1)〜(3)/麻生俊平/角川スニーカー文庫


主人公はハードボイルド小説の私立探偵に憧れる高校生。学校の空き教室で勝手に事務所を開設するが、当然周囲の目は白かった。風紀委員の幼なじみメガネっ子は校則違反のトレンチコートを脱がそうとするし、「本格推理小説」が好きな秘書のロリっ子は「謎解き」をしろと迫ってくるしで、どうにも決まらない。「現代の騎士」山田太一郎くんの明日はどっちだ。学園ハード・ボイルド・コメディ。全3巻。


……今までこれ読まずに麻生俊平を語っててごめんなさい。面白かったです。そうだよなー暗い重い厚いの三拍子が売りと言われてた「ザンヤルマ」だって随所にとぼけたユーモアは見受けられたわけで、こういうのも書けないはずないよなー。ましてやそれが作者の好きなハードボイルド物のパロディだというならなおさら(デビュー作「ポート・タウン・ブルース」はド直球のハードボイルド)。それでも1巻ではまだ文章がちょっとくどくて硬い感じがしたんだけど、巻を重ねるにつれてこなれてきた気がする。


内面描写でも、言葉にこそしないものの、ハードボイルドを気取ってやせ我慢しているのが(周囲のキャラにも)バレバレなたんてーさんが微笑ましくもおかしい。ヒロインである幼なじみのメガネっ子風紀委員とのラブコメも、ベタではあるけどいい味出してた。というかベタだからこそ、か。幼なじみとしての思い出とか一切合財描写してしまわず、匂わせる程度にしているのもこのお話には合ってて好ましい。毎回コメディに徹しきれず最後の最後で説教癖がちょろっと顔を出したりするのも、この作品に限ってはあんまり嫌じゃなかった。いやまあ作者本人は最初からコメディに徹する気はなかったんだろうけど。