EAT-MAN 殺しの遺伝子/真下耕一/電撃文庫


ネジでも銃でも、食べたものを手から再生することができる世界一の冒険屋、ボルト・クランク。その活躍を描く吉富昭仁の漫画を、真下耕一監督がアニメ化。さらにそれを監督自らがノベライズしたこの小説は、アニメ1話のゲストキャラ・詐欺師のキュレネが依頼を受け、ボルトを追う。

混乱から回復して気がつくと、私の心が自然の一部に還ったことを思い知らされた。
私という自分が、どうしてあの男を愛してしまったのか。
赤裸々な言い方をすれば、私がなぜ光を必要とするのか。
私自身が私に問うための十二日間の記録と設問。


真下アニメの分かりにくさって饒舌なわりに肝心なことは何も言わない、ひたすらに回りくどいことが要因で、(脚本が誰であっても)難解な用語や設定が出てくるわけじゃないと思ってたんだけど、そういうのって映像媒体だということを意識してやってたんだなあとこの小説読んで思った。基本が人情話だった原作・アニメと違って、ボルトの過去が語られる上でSF的設定の比重が高く、生物工学やらなんやらその手の用語も多いし、荒廃した未来っぽい世界を描写する文章、登場人物の言い回しも凝ったものが多い。時々ちょっとサイバーパンクっぽいところも。いずれにせよ、アニメ監督や脚本家が書く小説、というもののイメージからは大きくかけ離れていた。押井守みたいにアニメも小説もそんなにイメージ違わないならあまり驚かないんだけど、この小説は根幹のテーマとかは紛れもなく真下耕一のものなのに、それを表現する上で差異が生まれてるというか。まあそれって本来当然のことなんだけどさ。真下アニメのちょっとしたファンとしては、今のところ唯一の小説作品であるこれはとても興味深く読んだ。