テレ東18時台思い出話


1998年4月。富士見っ子だった自分のあの春期待の新番は、やはり「ロスト・ユニバース」だった。3年連続で放映され人気を博した「スレイヤーズ」と同じ神坂一の小説を原作に、同じスタッフで、同じキャストを随所に配置して製作された作品を、同じ金曜18:30という時間帯に放映。テレビ東京側も期待を寄せていたのではないだろうか。ところが結果はご存知の通り。お話の面白さはこの際置いておくとして、映像面がマズかった。「スレイヤーズ」も決して危なげない絵作りをしているとは言い難かったが、この作品はそれに輪をかけてひどく、今日に至るまで「作画崩壊」の代名詞となってしまった。90年代末〜00年代初頭はエヴァの影響で急激にテレビアニメの製作本数が増えたためか、これ以降もアレゲな作品が連発され、自分にとって好きな作品がアニメ化されることを素直に喜べない時代が続いた。


ロストユニバース DVD-BOX

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ところで、同じテレビ東京で「ロスト・ユニバース」の30分前、金曜18:00から放映されていたのが「カウボーイビバップ」だ。製作にテレ東の名前があった「ロスユニ」と違い、こちらはサンライズバンダイビジュアル製作ということになっている。銀河系を舞台に、何でも屋≒賞金稼ぎの活躍を描いたSFアクション*1という共通点を持つこの作品は、実際に観てみれば全く違う方向性であることは明らかだったんだけど、なんにしろ自分は最初「ロスユニ」の前座くらいにしか見ていなかった。「ロスユニ」のみならず同時期の他作品と比べて、アニメーションとして統一された絵柄でよく動いていたことは素人目にも明らかだったものの、なんだかいまひとつ訴えかけてくるものがなかった。その後、回を重ねるにつれて段々と面白くなっていったけれど、やはりハマりきれないまま。最終回の「よせあつめブルース」は一見して雰囲気が違うことが分かったけれど、愚痴っぽいな、という以上の感想は出てこなかった。


そんなだから、テレ東での未放映話を合わせた完全版が出てWOWOWで放映されると聞いても、それほど期待はしていなかった。ただCMでちらっと流れた教会でのワンシーンがかっこよさそうだったので観てみることに。すると驚いた。まるで印象が違ったからだ。お話のバリエーションがぐんと広がり、アクションシーンでは過激な表現も容赦なく使われ、「堕天使たちのバラッド」などには厨二マインドをびんびん刺激された。また、既に視聴済みだった話数も未放映話と絡めることで面白さがようやく分かり、テレ東放映時の自分の節穴アイに絶望したりもした。……テレ東の放送が、枠が確保できなかったため当初の半分の話数だったこと、前年のポケモンショックなどの影響もあって映像規制がかなり入ってきていることをアニメ雑誌で知ったのは、完全版を観る前だったか後だったか。とにかく「ビバップ」は世間的にも人気作品となり、劇場版まで作られるに至った。



小学校高学年〜中学生くらいの自分にとって、テレビアニメと言えば夕方のテレビ東京、という認識は強かった。「リューナイト」、「スレイヤーズ」、「エヴァ」、「ナデシコ」、「ウテナ」。角川やキングレコード製作の下、この枠で放映されたたくさんの作品は、今も自分の深いところに根づいている。その認識を変えたのが、この2作品だった。勿論その後も「リヴァイアス」を始め忘れられない作品は生まれたし、現在も「キルミン」を楽しんだりもしている。この2作品の成否が、あの枠自体と何か直接の関係があるとは思わない。ただこの2作品が並んでいた、ということに何か象徴的なものを感じずにはいられなかった。以降、自分のアニメ視聴生活はテレ東のみならず様々なキー局U局を含めたチャンネルの深夜帯を基本とし、製作もキング・スタチャよりビクター(現flyingDOG)が名前を連ねるような作品が主となっていった。同年、「ブギーポップ」「フルメタ」「マリみて」がスタートしてライトノベルの流行がファンタジーから学園物に移行していったように、98年というのはオタクとしての自分にとって色々と節目の年だったけど、この2作品が放映されたこともその一つだった。

*1:同年の作品だともう一つ「アウトロースター」もあった