エンジェル・ハウリング(9) 握る小指/秋田禎信/富士見ファンタジア文庫

エンジェル・ハウリング〈9〉握る小指―from the aspect of MIZU (富士見ファンタジア文庫)


ついにアストラと再会したミズーだが、既に姉は絶対殺人武器としてのみこの世に存在していた。帝都を出てどこかへ向かうアストラ、それを追うミズー。2人を会わせまいとするウルペン。彼らの行き着く先は。


5巻で転機を迎え、7巻で一歩先に進んだミズーが、マリオ、ウルペン、そしてアストラに自分の言葉を伝えるための巻だった。とはいえそれまでが対話とは無縁であったミズーのこと、すぐにはうまく伝えられないかもしれない。或いはその言葉が意味を持った時には、既に手遅れかもしれない。意味を持ったとしても、それぞれの行動理念を曲げて剣を収めるまでには至らないかもしれない。……だが、それでも、伝えなくてはならない言葉がある。矛盾するかもしれないが、そのためにミズーは剣を手に取る。


ということでミズー編完結。ヒステリー持ちのミズー姉さんがデレるまでを5巻かけてじわじわと描いていた。感想では触れることはあまりなかったけど、主人公が現役の職業暗殺者だけあって、秋田お得意の泥臭くもデタラメなアクション描写もこれ以上ないほどに極まっていた。特に7巻の、手を縛られた状態で、剣に額を打ちつけて相手の足に突き刺すところとか、よくやるよくやる。またそういうミズーの戦い方を、ちゃんとミズーの心境の変化と絡めて取り上げていたことに痺れた。ただ基本的に淡々と描写を重ねていたので、うおー必殺技だー爆発だー的なカタルシスには欠けたかも知れない。「オーフェン」は戦闘の主軸が魔術だから自然とその辺りは解消されるんだけど、その点念糸と精霊はあまり厨二マインドに響く戦闘法ではなかったかな。キャラクターはミズー姉さん以外では愛の戦士ウルペンと、彼とは正反対且つ秋田キャラとしては珍しく情念というものがほとんど感じられない、飄々とした性格のファニクが好きだった。でも犬回しの役割は今回も分からなかった。