魔術士オーフェンはぐれ旅 我が遺志を伝えよ魔王/秋田禎信/富士見ファンタジア文庫

我が遺志を伝えよ魔王―魔術士オーフェンはぐれ旅 (富士見ファンタジア文庫)


オーフェン個人の過去を抉るタフレム編から世界の秘密に迫るキムラック編への橋渡し。「機械」に比べると、設定を一気に開陳せず小出しに匂わせるだけのスマートなやり方になっていた。そして、今回匂わせた設定の一部は、シリーズ通して完全に明かされるということはない。スウェーデンボリ―が人間として生きた32年間とかね。このシリーズの設定の扱いに関していいな、と思うことは幾つかあって、最初から緻密で確固としたものがあるのではなくシリーズが巻数を重ねていくにつれてより深く広く構築されていくこと、設定が単なる設定に終わらず人間の日々の営みに与える影響までを描いていること、といった辺りなのだけど、この巻に特に顕著な「断片的な情報を匂わすだけでそれを完全に開陳しないことで、読者に想像の余地を残す」というのもその一つ。読者の欲望って際限ないからなー。魅力的な設定をしゃぶり尽くすまで話を続ける、ってのは現実的に考えてキツいと思う。

  • 貴族連盟つうか派遣警察は地図も作製してくれないのか。魔術士って独自のコミュニティにこもりっきりという印象が強かったけど、実は商売上手だったりするのか。
  • オーフェンがチャイルドマンから習った戦い方が「こかして踏みつける」だということが判明。
  • スウェーデンボリ―の伝説に関して「教科書に書いてあったことをそのまま言ってる」ってのは、優等生だったキリランシェロらしいなあ。
  • メッチェンはクリーオウのことをどう思っているんだろうか。最初なんだか無視してかかってたのはそういう性格だったってだけなのかな。
  • 見知らぬ女を助けたがるオーフェンの行動を「安易なダンディズム」と評するクリーオウ。秋田がこのシリーズをハードボイルドの観点からどういう風に見てるかが伺える。
  • オーフェンがメッチェンを見て「戦えば勝つだろう」と確信した理由ってなんだろう。基本的に自己評価の低いオーフェンにしては珍しい。
  • チャイルドマン教室の最秘奥は擬似空間転移と物質崩壊とあとは意味消滅ってことでいいのかしら。最後のってどこかで確定してたっけ?

まとまった感想書くための取っ掛かりがなくて途方に暮れた。