『ベティ・ザ・キッド』第1回 in ザ・スニーカー

the Sneaker (ザ・スニーカー) 2009年 06月号 [雑誌]


扉絵等イラスト込みで3段組22ページ。舞台は砂漠の惑星。若きガンマン「ベティ」が契約を結んでいる謎の男「ウィリアム」、先住民と入植者の混血である少女「フラニー」の二人の仲間と共に<神の船>メルカバ(戦車/実在するみたい。イスラエル製)で旅する。彼等の目的とは……。


ラノベ媒体では2006年の『パノ』以来のお仕事。砂ペンギン、走行亀、レインスポット、先文明の遺産<神の船>メルカバ(「培養砲弾」なんて単語が出てきたけど、有機的なアレなんだろうか)……。一つ一つを取ってみると目新しいものはないけど、世界の広がりとその砂が多分に混じった風、銃を灼く熱気、そこに住む人々の呼吸といった空気がよく伝わってくるスタートだった。やはしぼくの考えた「世界観」発表会ってラノベの大事な側面よね。その点『シャンク!!』は、魔法使い周りのシステムは面白かったけど妄想の入り込む余地があんまりなくてワクワクする部分が足りなかったからなー。今回は期待できそう。


シリアス/ギャグ比は『オーフェン』西部編以上『エンハウ』未満くらい。多分コメディ部分を一手に担うんじゃないかと思われる褐色小娘フラニーは今回あまり出てこない。賞金首の悪党二人の掛け合いは、『我が夢に沈め楽園』に出てきた温泉ギャング凸凹コンビを髣髴とさせてなんだか微笑ましかった。文体は、単に第1回だから説明することが多いってのもあるだろうけど、結構濃い目。バス船に乗り合わせたわけありの乗客たちをいちいち(〜と見せかけているが……だ)、と挙げていくくだりとか面白かった。これ読むと『機械の仮病』は地の文がすごい淡白だったんだなってのが分かる。「神に見放された土地」とか「人体同様戦車に急所とならない部分などほとんどない」とか「正義は勝つだろうか?勝つこともあるだろう。ただし正義とは無関係に」とか「殺すのは夕餉の団欒が一番いい。家族まとめて殺せるからな」とか、「長旅の後には棺だって楽園だ」とか、いつもの秋田節も健在。


あとはー……あるキャラがおっぱい放り出したりしてるけどお色気がほとんど感じられないのは、らしいというかなんというか。「あんたが助けてくれるんなら、あんただって愛してあげるわよ!」とか乾いてるなー。


ベティの実際の腕前とかウィリアムの契約の詳しいところとか『オーフェン』では強い強い言われながら実戦では拳よりも魔術よりも弱かった銃がどういう扱いになってくるのか、とかは次回以降で固まってきてから。