蝉しぐれ/藤沢周平/文春文庫

蝉しぐれ (文春文庫)


藤沢周平。お互いに口には出さずともほのかな恋心を抱いていた……と思っていた隣家の娘が、お偉いさんの妾になってしまう、というあらすじから察してくれる人もいるかとは思うけど、NTRを期待して読んだ。が、父親の切腹から始まる不幸にもじっと忍耐し勤めに励む主人公がかっこよすぎ、フッツーに感情移入して読んでしまった。仲間たちはいい奴で、ヒロインに落ち度はなく、憎むべきお偉いさんの姿はまるで見えない。なんというか、悪意が足りないんだよなー。ラストでは思わずほろりと涙が流れそうだった。