神々の山嶺(上)(下)/夢枕獏/集英社文庫

神々の山嶺(上) (集英社文庫)神々の山嶺(下) (集英社文庫)


夢枕獏の代表作の一つである山岳小説。カメラマンの主人公が、エベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む羽生丈二という伝説のクライマーの生き様を目の当たりにする。第11回平成10年度柴田錬三郎賞受賞。


他の長々続いているシリーズ物とは明らかに気合の入り方が違っていた。夢枕獏の得意とする、求道の為に色んなものを捨てる男の孤独、年だけを取っても何も手に入れてないことに気付いてしまった男の女々しさ、情けなさ、将来への不安、そこからの復活。そういったものが切実に胸に響いてきた。ちょっと残念だったのは、それまでに散々羽生が凄いことを成し遂げてきたせいか、それらと比べてエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂、というこの物語の到達点がどれだけ凄いのかよく分からなかったことかな。