はじまりの骨の物語/五代ゆう/富士見ファンタジア文庫

はじまりの骨の物語 (HJ文庫)


「冬」の軍勢に覆い尽くされようとしている世界で、彼等と戦う軍勢の中にいた女戦士ゲルダは、彼女の師でもあり父でもあり情人でもあるアルムリックに裏切られる。ゲルダは復讐を決意するが、その行動の陰には世界の秘密が関わっていて……。第4回ファンタジア長編小説大賞・初の<大賞>受賞作。画像はHJ文庫から出た新装版。


異世界ファンタジーにおいて世界を構築する力と世界を描写する力というのは別物で、前者においてならこの物語はありがちな北欧神話をベースにしていて、そんな特別とも思えない。が、後者の力には圧倒された。「冬」に埋め尽くされようとしている世界、主人公の吐く息の白さ、情事の熱、そういったものが臨場感たっぷりに描写される。これこそ異世界ファンタジーを読む醍醐味だ。『はじまりの骨〜』は当時の自分にそれを教えてくれた。


しかし、富士見はこの人をどうしてもうちょっとうまく扱えなかったのか。電撃における高畑京一郎くらいのポジションになってもよかったと思うんだけど。『ハリポタ』『指輪物語』の時に映画化……は、キャラとか戦争描写が地味だからあんまり映えないか。