陰翳礼賛/谷崎潤一郎/中公文庫

陰翳礼讃 (中公文庫)

  • 西洋人は闇を駆逐し、常に進取を求める。東洋人は陰翳を好み、古いものを尊ぶ。建築物でも少々陰翳を残しておいた方を日本人は好んできたし、食事も仄かな明かりの下の方が美味しく見える。女性にしても暗闇に包まれていた方が美しく、神秘的だ(アメリカのAVが無闇に明るいのはそのためだろうか)。近現代、この国が西洋の文明を積極的に取り入れたことによって、これらが反発しあう現象が起こっている。
  • 東洋人は西洋人に比べ、ものぐさであることをそれほど忌避しない。たくさん食べればそれほど活動しなければならないが、それはあまり食べない代わりに日々の活動を抑えることとどれほどの違いがあるのだろうか。
  • アメリカの俳優が皆白い歯を誇示するように歯を見せて笑っているのは、自らが文明人であることを示しているのかもしれない。
  • 西洋の音楽……のみならず芸術の全ては自分が楽しむよりも他人が楽しむことを主眼に置いている。どこか作為的な感じがする。
  • 西洋文学は専ら恋を主題としてきた。日本では恋はどちらかというと卑しいもの、あまり表に出すのが慎むべきものとされてきた。平安時代は例外で、女性崇拝の精神が生きていた。
  • 睦言の際、日本の男子は早く疲労する。がつがつ食べないため西洋人に比べ頑健な体をしていないからだ。空気がじめじめしていてなかなかだるさがとれないというのもあるかもしれない。故にその方面において淡白である。


云々。