必殺お捜し人(1) 白蛇の迷宮/小林めぐみ/富士見ファンタジア文庫

白蛇の迷宮―必殺お捜し人 (富士見ファンタジア文庫)


『回帰祭』の口直し(いや面白いは面白いんだけど……)と、『GOSICK』の新刊がなかなか出ないので近代ヨーロッパ的な世界で子どもたちが元気に走り回る話を補充したかったのと、一部の初期こばめぐ原理主義者をdisるために再読開始*1


偉大なるトレジャーハンターの父親を持つ「捜し屋」ウィルを中心に、彼のことが大好きな気の強い少女マギー、彼女のことが好きでウィルのことをらい×扱いしてるけど、いつも振り回されてばかりな医者の息子バズ。3人が「インディ・ジョーンズ」的な大冒険を繰り広げる。


イメージとしては子どもが主人公の児童文学。至上命題は「分かりやすい文章で、分かりやすい設定で、面白いものを」。「剣と魔法」じゃないファンタジー。担当から厳命されたことは「世界を作りこまないこと」。前二つはともかく、最後に関しては、まあ確かに他の作品ほど鮮烈な「世界」が前に出てくることはないんだけど、でも、やっぱりこれ作り込んでるよなあ、というのが行間からばしばし伝わってくる。架空の国の歴史や文化についてもちゃんと資料に当たってるっぽく、子ども向けだけど子ども騙しではない、ウェルメイドなジュヴナイル。後々毒も出てくるんだけど、それが露悪的なものにならず、子どもたちが負けずに頑張る辺りに好感が持てる。こばめぐ作家論とかを書くとしても、ちゃんとこの前後と繋がってる。ひさいちよしきの描く可愛らしい子どもたちのイラストも魅力。


この巻では町に隠された地下迷宮と、そこに棲む蛇と、森の流民の秘密が解き明かされる。初読時、面白いけど特になーと思いながら読み進めてたら、最後の最後でこばめぐらしいイメージが出てきて唖然とした。


余談。SFマガジンasin:B001KY1TEQ)のこばめぐインタビューを呼んだ。『回帰祭』のラストは何パターンも作った中からああなったらしい。アツverのもあったとか。 第14回(1988年)のSFコンテストで一次選考通過。同じ回の応募者に岡崎弘明、岡本賢一など。ドラマガを手に取ったのは火浦功がきっかけ。デビュー当時、新井素子は読んでなかったらしい。ああ、あと本人の写真が載ってた。


この手の作品で(外国人とかいうわけでもなく)読み書きができない主人公、ってのも珍しいかもしんない。確か後半にいくにつれて勉強して覚えていったような気もするけど。

*1:こばめぐ読者は大まかにねこたまさかなねこのめから入ってきた第一期、お捜し人からの第二期、ビールからの第三期に分けられる、気がする