第四間氷期/安部公房/新潮文庫

第四間氷期 (新潮文庫)


残酷な未来、というのがあるわけでなくて、未来というのは現在に生きる我々にとってそれ自体既に残酷である、ということ。完全に異質なものとして描かれた未来の住人から見た我々は、まるで「この人たちは今日の文明社会にどっぷり浸かった身からすると未開で野蛮だけど、実は自然と共存している素晴らしい種族なんです!」というような視線を浴びせられる。いや、実際はそんなこと一言も書いてないんだけど、ニュアンスとして。


安部公房作品の中では比較的分かり易い、と聞き及んでいた。まあ確かにそう言えなくもないけど、それは安部公房作品の中での話で、単体では決して分かり易いとは言いにくい。分かり易さの質が違うのかな。他の作品は構成が捻じ曲がってて分かりにくい。この作品はSF……というか、理系的な要素が分かりにくい。