夜のピクニック/恩田陸/新潮文庫

夜のピクニック (新潮文庫)

夕暮れの時には、辺りが暗くなってくるのに疲労が重なって憂鬱になったが、日が暮れてしまうと、逆に少しずつ元気になってくる。自分が新たな世界の住人になったことを認めたからだ。昼の世界は終わったけれども、夜はまだ始まったばかりだ。物事の始まりは、いつでも期待に満ちている。


六番目の小夜子』の時も感じたけど、この人の作品はある種の生贄となるキャラクターを登場させないと成立しないのかなあ。未成熟なところはあれど基本的に顔も頭も性格もよく、でも恋愛にはさほど積極的ではない「いい人」な主人公たちの中に、ある意味恋愛に必死で、我が侭で自分勝手な「悪役」を一人だけ放り込むってのが、すごいグロテスク。何がグロテスクかって、彼女だけ主人公たちが共感するに足る内面がまるで見えてこないってこと。それを吐露する機会すら与えられない。物語世界に味方が一人もいないってこと。なんだか主人公たちの「いい人」っぷりを引き立てるためだけに出てきたキャラとしか思えなくなってくる。そりゃ主人公たちの視点からのみ話が綴られればそういうこともあるかもしれず、本編には描かれてないだけで彼女には彼女の物語があるんだろうけどさあ。ざっと読んだ感想でも主人公たち=いい人、その悪役=ああこういう奴、高校の時いた!ぶりっ子しててうざかったなーって人が多くて、なんだか可愛そうになってくる。最後の方で「彼女は単に幼いだけなんだ」って言われてたけど、それはフォローになってるんだろうか。