ダブルブリッドⅦ/中村恵里加/電撃文庫

ダブルブリッド〈7〉 (電撃文庫)


やまきのくまさん奮闘す。でっかいケモノとちっちゃい女の子によるジブリっぽい話。但し基本殺伐。ワンエピソードとしてみれば、1巻以来の綺麗なまとまり方だった。特にラストのイラストの使い方が印象的。メインキャラクターの死を決意した時の作家は強い、ということだろうか。


八牧の初登場は6巻冒頭で、六課の面子、というか本編中に登場しているアヤカシの中でも一番遅い。そして多分、一番アヤカシというものを体現しているキャラクターなんじゃないかと思う。主のように自分たちと人間との関係を変えたいとは思っていないがおおよそ全ての人間が嫌いで、人間の常識に頓着せず、優樹の前では気を遣ってはいるものの、それ以外の場所では人間を殺すこと、喰うことにさしたる感慨も覚えない。自分にも若いアヤカシにも「アヤカシらしく生きること」を自分にも若いアヤカシにも課している、ように見える。シリーズ構成を考えると、中華ロボなんかよりもっと早く登場してもよかったキャラなんじゃないかと思う。でも、こういうキャラが駄目押しのようにこのタイミングで登場してこその『ダブルブリッド』なんだろう。


ここら辺、太一郎っていう本来なら人としての常識を担当するはずの主人公が正気を失った(元々色んな意味で人間の範疇からしても規格外ではあったけど……)こともあってか、作者が大分アヤカシ側に寄って書いているように思えた。『星界』の作者の人におけるアーヴ萌えみたいなアレは感じないけど。人外キャラの内面を描いた、或いは描かなかった作品としては、『GOTH』と並んで好き。