夏の魔術(2) 窓辺には夜の歌/田中芳樹/講談社文庫

窓辺には夜の歌 (講談社文庫)


漫画やアニメのヒーローが活躍するには現実という舞台は法律や常識といった制約が多すぎる。でも、フィクションに馴らされた読者は割り切って色んなことをスルーする。例えば、世界の命運をかけた決戦のさなか、街中で何かを追いかけている、あるいは何かに追われている主人公が「おっちゃん、ちょっとこれ借りるよ!後で返すからー!」と言って有無を言わせず自転車やバイク、四輪車を奪ったり、といったお決まりの光景。結果、乗り物がボロボロになって返ってきても非常識だ、と文句をつける読者は少ない、と思う。ところがこの小説の主人公である耕平兄ちゃんは、そういうところをさらっと流さず、世間の常識、というかこの場合自分の良心?に対してにいちいち言い訳をしていて、そこが気になった。作品にもよるけど、自分はむしろフィクションの中の非倫理的な行動とかには無駄に神経尖らせてる方なんですけどね。