異次元騎士カズマ(9)(10) 剣奴王ウォーズ/王領寺静/角川スニーカー文庫

剣奴王ウォーズ―異次元騎士カズマ〈1〉 (角川文庫―スニーカー文庫)剣奴王ウォーズ―異次元騎士カズマ〈2〉 (角川文庫―スニーカー文庫)


娼館に行くのにうきうきするジュブナイル主人公って、そうはいないよなあ……。と思ったけど、『ラグナロク』の主人公も1巻でいきなり足を運んでたような気はする。恐るべしスニーカー。ま、ファンタジーだからなんとなく許されてるような気もするけど。

風呂がロゥマなら、食い物はどこが最高だろう。
住まいは、服は、馬は、武器は、それから女は、どの時代のどの国が一番いいんだろう。
確かめてみたいな、時と場所とを越えたベストを。
それが、オレにはできるんだもの。
オレ以外の誰にも、出来ないんだぜ。
そう思うと、自分の未来に希望が持てるような気がした。


この物語が、結局のところ義理人情の世界だなあと感じるのは、異世界ファンタジー(厳密には違うんだけど)の常としてカズマが様々な時代の様々な価値観に触れていく中でも、彼自身の行動原理がそれ以外には支配されてないから。例えば、『骸骨旗トラベル』でカズマが復讐を果たした海賊と、しょっぱなマノンをレイプしようとしてたキャプテン・キッドの一味にはどれほどの違いもないけど、後者には義理があるし、人情を傾けられたので味方する。例えば、『剣闘士ウォーズ』ではカズマは剣闘士奴隷を解放しようと奮戦してるけど、それはどっちかというと苦楽を共にし、自分を助けてくれた仲間を助けてやりたい、という一心からで、必ずしも義憤とか呼ばれるものではないよなー、とか。なんつうか、それはそれで正しい認識方法だなーとは思う。いちいちその世界のことに深く首突っ込んでたらきりがなくなりそうだし。