大久保町は燃えているか/田中哲弥/電撃文庫
今回読んだのは旧版のほうだけど、書店で探すならこちらの方がいいと思ったので画像はハヤカワから復刊された方。
一足先に大学に推薦合格を決めてしまった主人公は、田舎の工場で住み込みのアルバイトをすることに。ところが、高速出口を間違って降りたところは兵庫県明石市大久保町。そこは、井上ナチスが占領する町だった……。
『大久保町』3部作の2巻目。前『大久保町の決闘』ほどのテンションの高さはないけど、その分キャラクターがみんな間が抜けている。占領からの解放を目指すレジスタンスに主人公が合流していく、という話なのだけど、全く緊張感がない。唯一まともっぽいレジスタンスのリーダーさえ、周囲に感化されたのか時折情けないところを見せる。でも、ラストは強引にいい話に落としてみせる。この読後感のよさは異常。
やっぱりこの子は、あの人のこと好きなんだな、と幸平はがっかりしながら考えた。けど別にがっかりすることはないよな、と考えなおす。この子のこと、ぼくなんとも思ってないし。
すると、鮎は軽く添えるように握っていた幸平の手をぎゅっと強く握った。
好きだなあ、と思う。
ボンクラ主人公を書かせたらホントにいい味だしますねこの人は。