夢の樹が接げたなら/森岡浩之/ハヤカワ文庫JA

夢の樹が接げたなら (ハヤカワ文庫JA)


「夢の樹が接げたなら」「普通の子ども」「スパイス」「無限のコイン」「個人的な理想郷」「代官」「ズーク」「夜明けのテロリスト」を収録した短編集。


……この人、ひょっとして人間、というか自分の生み出したキャラにあんまり深い愛着を持たない人なのかなあ。それとも、私が普段読んでるライトノベルに、そういうの出しすぎな人が多いだけなのかしら。これは、『星界』を読んでる時にも感じたことなんだけど、どういうキャラ作りをしてても、目線がどこか一歩引いてるというか冷めてるというか。乙一作品を読んだ時に覚えた感覚と同じような。アーヴへの愛には溢れてるけど、それは自分が生んだ種族そのものへの愛だしなあ。文章が装飾のない淡白なものだからそう感じるだけ?


もちろん、だからといってつまらないということは全くないのだけど。どの作品も、短編が苦手な私でも楽しめる刺激に富んだ内容でした。森岡浩之は短編の人、という評価も納得。表題作「夢の樹が接げたなら」「ズーク」「個人的な理想郷」はアイディアだけで既に勝ったようなもん。「スパイス」は、不条理ではあるけどひどく合理的だよね、というか。