『カナスピカ』に至る秋田禎信の女性キャラ像
- レティシャ・マクレディ(魔術士オーフェン):猫にトイレを仕付ける気苦労だけで二キロやせたほどの神経質。その割に完璧主義で、うまくいかないとアルコールに現実逃避。酔っ払った挙句弟を押し倒す。
- ロッテーシャ・クリューブスター(魔術士オーフェン):14歳で結婚してすぐ離婚した挙句数年後に元婚約者に瀕死の重症を負わされる。
- ミズー・ビアンカ(エンジェル・ハウリング):年中ヒステリー。度を越すと「獣の瞬間」なる最強状態に突入。
- ミッツォ・シール(エンジェル・ハウリング):ギャルが少ないという編集の要望に応えて登場したものと思われるが、その巻で顎の辺りを踏み砕かれて死亡。
- スポーツ屋(閉鎖のシステム):最近仕事が忙しく午前様ばかりで洗濯物を陽に当てて干すことも出来ず身も心も荒んでいく一方のスポーツ用品店店主。ゴミ箱を凹むほど蹴飛ばすのがストレス解消手段。
以上を総合すると、生活に疲れたヒステリー気味の年上女性が秋田の理想の女性像であると言えなくもない。……てか、単なるイヤ展だなこれは。ヤンデレ?いやさヒスデレ?……デレ?
秋田の描く女性キャラは生々しくて"萌え"られない、ってのはよく言われてて。実際二次元より現実寄りかどうかは置いといて、女性読者からもそういう声が出てるのは確か。だから、そういう臭いがあんまりしなさそうな(今のところあらすじだけしか判断材料がないけど)『カナスピカ』の主人公にちょっと驚いたわけですが、価値観の多様化が叫ばれる昨今、秋田も生々しい女性萌え作家として売り出していってもいいのじゃないか、とちょっと思ったり。生々しさと"萌え"って対極という感じもしますが、あえてそこに萌えるというか。なんつうか、「お前らウブなオタクどもに俺が現実の女の嫌な面をまざまざと見せつけてやるぜ!」とかそういう方向性じゃなくて、生々しいなりに可愛いところあるキャラが多いしね。『オーフェン』無謀編8巻収録『天使の囁き』はその極致だと思うわけです。
「わたしってなんなのよ。そりゃ、誰だって等身大に見られたくないから努力するのよ。でも、だからって、ありのままを分かって欲しくないわけじゃないのよ」
(中略)
「しょうがないじゃない。こういうふうにしか、できないんだから」
そういう風に考えてくと、アニメのティッシ:三石琴乃って、なんとなく意図するところが分からんでもなかったなあ。にしても、あの時点で既に立ち位置的にも年を取りすぎてた気がしなくもないけど。今やるなら……『あさっての方向。』の伊藤静、とか?
ところで、『カナスピカ』ですが、なんか以前にも秋田がハードカバーを出す予定があった、って聞いたんですけど、これは本当なんでしょうか。この時は富士見からの予定だったみたいですが。初耳。