放浪息子(6)/志村貴子

放浪息子(6) (BEAM COMIX)


文化庁メディア芸術祭マンガ部門・審査委員会推薦作品!!……こ、この題材で?(失礼)いや、この題材だからこそ、なのか……。同じくマンガ部門の優秀賞には『よつばと!』も入ってて、えーあんなポルノな漫画が、とか思ったり。


さて、『ロミオとジュリエット』の倒錯劇を演じることになった文化祭編。気になった点が二つありました。一つは、女の子になって、女の子として、男の子の高槻くんに愛されたいというにとりん。あーそっちの方向に行くのかー。女装を趣味としていて、男としての自分に嫌悪感を持っていることと、男装してる高槻くんが好き、という感情は全く別物だと思っていました。これで、なんだか一線を踏み越えた感じ。……や、まだまだこの後の話の展開でどうなるかは分かりませんが、でも、そうだよなあ。流れ的にはそっちのが自然だよなあ。


もう一つは、千葉さんとマコちゃんの関係。天然な魅力がある佐々ちゃんとは対照的に、口が達者で聡い子であるまこりんは、持ち前の距離感で千葉さんに対してもなかなか良好な関係を保っていて、千葉さんも彼には強く出れなくて、結果うまく会話できてるように見えました。好きな人がいないからこの気持ちが分からない、とさおりんに言われちゃった佐々ちゃんをまこりんがフォローしてる図とか、なんだか象徴的。でも、そんなまこりんもいざ主役(彼の中だとにとりんのポジションであったはずの)に立たされてみると、脆いところを露呈してしまう。そこを千葉さんに「卑屈な奴は嫌いよ」とばさりと切り捨てられたり……。んーいい流れだなあ。でも、この後どうすんのかなこの2人。


あとは、「ぼくのが絶対かわいい!!」というメガネの人とか、相変わらず弟に対して嫉妬を隠せないお姉ちゃんとか、「人を好きになったことがないならこの気持ちは分からないかもしれない」とか言われちゃう佐々ちゃんとか、意外な一面を見せた更科さんとかが見所。そしてなんと言っても千葉さん。アンニュイだったり、ぼーっとしてたり、かばんを振り上げてたり、褒められて照れたり、ホント情緒不安定な。最高です。


……その一方で、安那ちゃんのフラグは忘れ去られたままなのでした。お姉ちゃんを訪ねてきたモデル一行と入れ替わるようににとりんたちがフェイドアウトとか……志村先生なんかの嫌がらせですかそれは(笑)