ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ/ジャック・ヨーヴィル 訳:安田均・笠井道子/角川文庫

ドラッケンフェルズ―ウォーハンマー・ノベル (角川文庫)


600年以上の生に飽いていた吸血鬼ジュヌビエーブは、<大魔法使い>ドラッケンフェルズを討伐するべく結成された皇子オスバルトのパーティーに同行することに決める。彼らは幾多の苦難を乗り越え、その名を冠した砦で、<大魔法使い>を打ち倒す。それから四半世紀がさらに過ぎ、ジュヌビエーブの元へ、皇子から一通の手紙が届く。それは、25年前の彼らの冒険が、あの砦で演劇として再現されるという報せだった。


ドラキュラ紀元』シリーズのキム・ニューマンが、その第1作を発表する数年前に別名義で世に送り出していた作品。主人公も同じく、ババァロリ吸血鬼ジュヌビエー"ブ"。『ウォーハンマー』というTRPGを原作としているらしいですが、どこまでこの人の創作によるものなのかは、よく分かりません。とりあえず、世界観だけはそのまんま依拠してるみたいだけど。翻訳は、安田均。言わずと知れたグループSNEの偉い人だけど、実はこの人の著作を読んだのは初めて。表紙イラストは山田章博。なんか、すごい面子だ。……まあ、正直言うなら表紙はちょっとバタくさすぎて、あんまり好きではないのだけど。


ドラキュラ紀元』の続編がなかなか手に入らなくて、間を埋める意味で読んだのだけど、これも面白かった。手に汗握るアクションも、刺激的な濡れ場も、日本人オタクが生み出したようなキャラクターも、はちゃめちゃな設定も、破天荒さ、という意味ではちょっと『紀元』には及ばない気がしたけど、その分、300Pという長編小説としては決して多くない分量で、群像劇なんてものをやってるにも関わらず、うまくまとまってました。序幕でありがちなファンタジーっぽいなあと思ってたらすぐにそれが終わって、お話は真の幕開け。ラストに向かって収束してく緊張感がすげえ。あえて言うなら、エピローグがちょっと陳腐っつーか、蛇足のような気もしたけど、あれは演劇っぽさを狙ったのかなあ。


あと、過去の出来事とそれを再現した演劇が絡み合っていく様は、『ドラキュラ紀元』での史実と創作が入り乱れてカオスになっていく展開の先駆けというか、そんな気がしました。こういうの好きなんでしょうね作者が。ああなんかますます親近感が。