星の、バベル(上)(下)/新城カズマ/角川ハルキ文庫

星の、バベル (上) (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)星の、バベル〈下〉 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)


長年の民族問題からようやく解放されつつある、南洋の小国・メソネシア共和国。政府と反政府組織の和解に多大な貢献をした、一人の日本人言語学者。同じく日本からやってきた女性ジャーナリスト。蘇生させられた民族的な伝統を受け継ぐ刺青少女。駐留米軍と強い繋がりを持つ大統領秘書官。民族紛争に、政治劇に、環境汚染に、絶滅危惧言語に、原因不明の疫病に、謎の巨大生物に、そして宇宙からやって来た非地球産の生命体。様々な要素が時に並行して、時に絡み合いながら話は進む。


面白かった。衒学的で、知的好奇心を刺激される内容。なのだけど、上記のような様々な要素が撒き散らされる展開に、振り落とされそうにもなりました。「蓬莱」で好きだった漫談調の文章もなくって、どうにもリズムに乗れないし。こういうの読むと、自分の知識不足を実感させられる……。それでもなんとかついていけたのは、作中の言じゃないけど、自然科学SFっつうよりは人文科学SFだからかなあ、という気がします。


蓬莱学園の魔獣!」との繋がりについて。南洋の孤島という舞台、政治劇、環境汚染、言語学ネタ、謎の巨大生物ネタ、物語の鍵を握る謎の美少女、眼鏡ヒロイン。どっかで、あの<獣>が<エルトンの魔物>そのものじゃないか、と言ってる人がどっかにいたけど、そういう妄想ができなくもない。くらいか。ネタのまとめ方というか、分かりやすさに関しては「魔獣!」のが上のような気もするけど、そこはラノベの面目躍如といったところでしょうか。あとキャラの濃さ、活劇っぽさも。目指してる方向性の問題に過ぎないんだろうけど、上巻を読み終わった時の期待を流されたのは確か。


あと本編とは関係ないけど、面白かったのは参考文献の記載の仕方。インターネットで調べたものについては煩雑さを避けるため利用した検索ワードのみ記載って、あんまり見たことないなあ。この場合、使ったのがgoogleでもyahooでも、その都度その都度こっちが受け取る結果って違ってくるわけだけど、自分で調べる過程を楽しむ分にはこういうやり方のがいいのかも。


しかし、田中比呂人で南洋の島国で刺青少女って、編集者も分かっててやったんですかね。

感想リンク

http://www.h2.dion.ne.jp/~vain/book/log/200402.html#29_t1
http://white.niu.ne.jp/Freetalk/0202b.html#160140a
http://d.hatena.ne.jp/nuff-kie/20060820/1156087147


一番下の、

オタクという名のドクター・フランケンシュタインは、如何にして戦闘美少女なるものを作り上げたのか?その情熱を綴った作品。


ってのに、思わず膝を打ちました。とすると、下巻でヴィナが戦闘どころか碌な見せ場すら与えられなかったってのには、なんか作者の意図を感じるかも。