やみなべの陰謀/田中哲弥/ハヤカワ文庫JA
ある日、栗原守のところにハゲでマッチョの大男が持ってきた千両箱。それが全ての始まりだった。ラブロマンスや時代小説など、それぞれ独立した6つの短編がやがて一つの形をなすという趣向の作品。
本当は順番通り「大久保町」シリーズを読破してからにしたかったんですが、いつになるか分からないのでさっさと読んじゃいました。ちなみに、上にリンク貼ってるハヤカワからの再版じゃなくて、電撃の方。……前者に加筆修正があると気付いたのは、後者を読み終わってからでした。まあでも、前者だとあとがきがないらしいし、表紙もこっちのがインパクトあるので、いいか。
さて肝心の内容はと言うと、流れるような筆致に、滅茶苦茶やっても最後にはきっちりじーんとさせてくること、あとはボンクラ主人公を描くのがうまいことなど、「大久保町」と変わらず安心しました。特に好きなのは、「千両は続くよどこまでも」の川北老人と寺尾のやり取り。ああ、いいなあ。こういうの大好き。しかし、最大の特徴である構成は、正直なところまだ把握しきれてません……。
- 千両箱とアロハシャツ
- 千両箱とアロハシャツラスト(栗原守が2億円のスーツケースを渡される)
- ラプソディ・イン・ブルー
- 秘剣神隠し
- マイ・ブルー・ヘヴン
- 千両は続くよどこまでも(1) 二の丸公園〜スーツケース横取り
- 同(2) 川北老人との再会〜ヤクザを殴る〜大村井君自殺未遂〜千両箱発見
- 同(3) お鈴ちゃんと会う〜栗原守に千両箱を渡す
- 同(4) 川北老人との再々会〜栗原守に2億円を渡す
これが、作中で示された順序通りの時系列。で、これを通常の時系列に並べると、
- 秘剣神隠し
- (「千両は〜」から30年以上前、隠居した川北老人と寺尾が出会う)
- 千両は続くよどこまでも(2)
- (川北老人、他界?)
- ラプソディ・イン・ブルー
- 千両は続くよどこまでも(3)
- 千両箱とアロハシャツ
- 千両は続くよどこまでも(1)
- 千両は続くよどこまでも(4)
- 千両箱とアロハシャツラスト
- (栗原守、大村井君の家で千両箱を見つける+大村井君、村安に殺される?)
- (寺尾、40代の栗原守のところに現れる)
- マイ・ブルー・ヘヴン
こうなる。で、寺尾が体験した順に並べると、
- 秘剣神隠し
- (寺尾、40代の栗原守のところに現れる)
- マイ・ブルー・ヘヴン
- 千両は続くよどこまでも(1)
- 千両は続くよどこまでも(2)
- 千両は続くよどこまでも(3)
- 千両は続くよどこまでも(4)
- (江戸時代?に戻り、一両小判を金庫に戻す)
- (30年前、隠居した川北老人と出会う)
……えーとすいませんよく分からなくなってきました。誰か、タイムパラドックスとかその辺に詳しい人、ちゃんとした考察してくれないかなあ。
あと、栗原守と茜ちゃんが互いに既視感を覚えて一瞬の内にいい仲になったのは、信次郎とるりの御前ヶ池で飛ばした想念思念が何故か彼らに宿ったのだろうかとか、色々妄想は耐えないものの、知恵熱が出そうなのでこの辺にしておきます。