とらドラ2!/竹宮ゆゆこ/電撃文庫

とらドラ〈2!〉 (電撃文庫)


主人公たちの学校に転校してきた現役モデル女子高生。街ですれ違えば誰もが振り向かずにいられない美貌を持つ彼女はしかし、究極の猫かぶり女だった。彼女の性格が、大河たちの仲を引っかきまわす。全員片思い!逆走ラブコメディー2巻目。


こういうキャラって、大抵最初は正体を偽って主人公に近づいて、ヒロインとの仲とか引っかき回すだけ引っかき回して、ラストで化けの皮が剥がれる……ってのが馬鹿一だと思うんですが、最初っから主要キャラクターがほぼ全員それに気付いてるってのは珍しいですね。この調子だと、クラスの取り巻き連中とかも実は気付きながら付き合ってる、とかありそう。それはいいんですが、初っ端で新キャラが既にヒロインにしてやられているせいか、ライバルとして全然対等な立場にいなくて、当て馬になることが最初から決められているのが、ちょっと引っかかりました。

こういうタイプのキャラはほとんど最後はガツンとやられて改心、というパターンになるので、それをなんとか回避しようと工夫してるのはわかるんだけども、ひねろう、ひねろうとした結果かえって空回りしてしまっている印象。


http://d.hatena.ne.jp/USA3/20060517#p1


別に彼女のキャラクターとしての魅力が劣っているとは思わないんですが……基本的に主人公側:正しい、敵(というか主人公たちと対立する立場のキャラクター):間違ってるで固められた構図があんまり好きじゃないんですよね。や、これはそこまで極端なものでもないですが。本来彼女に誘惑されて心乱されるはずの竜児も、彼女を見る目は可哀想な人を見るそれだし。最初の粗筋で彼女が大河たちの仲を引っかきまわす、と書きましたが、実は彼女の方が引っかき回される話ですよねこれ。そういう視点で見ればまあ面白いんですが、彼女に関して竜司の感情がもう少し劇的に動いてくれないと、やっぱり微妙かなあ。相手の腹が分かりつつ誘惑されてく様を描く、というのもそれはそれでアリかと思ったけど。うーん私自身が色んなものに縛られてるだけという気もする。


いや、まあ、フォローしとくと面白くはあったんですよ。ただ、たけゆゆに関しては今までわりと絶賛気味だったんで、書いてないこと探してたら批判になっちゃいました、というような。


今回、株が一番上がったのが竜児でも大河でも北村でもなんとかマーキュリーでもなく、本筋とあんまし関係ないとこで奇人変人っぷりを増したみのりであるというのはむべなるかな。


あと、あの終り方。あれはやっぱり「田村くん」が売れたからなんでしょうね。

次回が来週すんなり訪れる連ドラなら構わないこの手法も、小説でやれば製作側の傲慢でしかないという持論を持ちつつ、この手法を使ったら次巻の売上がガタ減りしたとかの実例が挙がらない限り使われ続けるのかも知れないと考える。


http://d.hatena.ne.jp/yk-sound/20060513/p2


「封仙」やらなんやら、鬼のような引きの後に長らく出ない続刊に悩まされてきた身からすると、こういう意見も納得できます。基本的に週刊もしくは月刊の漫画やアニメなどと比べるのも卑怯だと思いますが、しかしそれでも、ライトノベルの多くがシリーズ化を前提としている以上、ああいう次回が気になるようなうまい引きってのは歓迎します。むしろこれまであまり定着しなかったのが疑問なくらい。