ゼーガペイン#13「新たなるウィザード」

開始当初の評判は微妙だった本作。演出はそう悪くないものの、どうにもCGがもっさりしていて、ロボットバトルは盛り上がらないままだったんですが、量子サーバー内に再現された仮想現実という虚構の中で、それと気付かないままの登場人物たちによる青春描写の切なさが好評により、徐々に話題に上る機会を目にするようにもなってきていました。


それが、この折り返し地点で、その青春描写で大きな役割を果たしていたヒロイン・カミナギリョーコが死亡……。


このカミナギが死亡するという展開は、わりと初期からファンの間では予想されていたようです。いつ消えるか分からないデータ上の存在という設定上の脆さ(これは登場人物みんな同じですが)。それを主人公に知らしめるためのヒロインはどういうポジションにあるべきか。自分がそういう存在であるという衝撃的事実を知っても、主人公のキョウとは対照的に表面上は動じなかった強さ。カミナギと対を為すダブルヒロインの片割れ、シズノ先輩の影の薄さ。その他諸々。


とにかくカミナギは劇中で優遇されていて、スタッフ的にも、カミナギを可愛く描くことは至上の命題に置かれていたように思います。元々作画は安定している作品ですが、彼女の様々な仕草に対するスタッフの意気込みは尋常じゃなかった。そして、その先に待っている悲劇を予感していたからこそ、視聴者の目にも、彼女はなおさら可愛く映っていました。


で、今回。前回世界の真実に気付いたカミナギは、同時にキョウたちと共に戦うことを余儀なくされます。予告の段階ではこのアニメらしからぬギャグ回で一休みか?という雰囲気で、実際、Aパートは別のアニメでも始まったか?という感じでした。思えば、そこから罠は始まっていたのです……。


多くの人が死を予想していながら衝撃を隠しきれない理由は、ここにあるのでしょう。死ぬとは思っていたけれど、まさかこの回で死ぬとは思わなかった。メインヒロインが初陣でいきなり死ぬなんて、誰が予測できるでしょうか。私はと言うと、訓練での優秀さから、せいぜい実戦で真の恐怖を味わうぐらいだと思っていました。


実際、今まで幾重にも丁寧に立ててきた死亡フラグからすると、今回の展開は唐突で、描き方としてもあまりに雑過ぎるように思います。今まで重苦しい雰囲気ばかりで疲れていたところにこのギャグ回で、心休まるかと思ったらこの仕打ち。丸々1話使って死を演出したアークとは対照的です。私も、悲しみより、唖然とした気持ちの方が勝ってしまいました。が、それだけに衝撃的ではあった。持ち上げて突き落とす、のお手本みたいな1話でした。


これからカミナギが復活する展開はあるのか。何分にもまだ1クール残っているし、設定が設定だけに、敵として復活するだろう、という見方が大勢を占めるようですが、私としては次回予告の「消されるな、この想い」が「忘れるな、我が痛み」に変わったこともあいまって、そんな簡単に行くかなあ?と、少々懐疑的です。虚構世界の中で、身近な人の死、その痛みこそが自分が生きていることを実感できる唯一のものである、とそういう展開を予想。復活するにしてもラスト近辺に持ってくるんじゃないかな。


しかし、同じ川澄綾子主演・新居昭乃主題歌の「KURAU」もそうだったけど、展開が早くて、2クールがやけに長いアニメだ……。