三国志(7)/吉川英治/吉川英治歴史時代文庫

三国志(7)(吉川英治歴史時代文庫 39)


長髭の偉丈夫が鬼籍に入ったのをきっかけに、戦乱の世を駆けた英雄たちが次々と命を落としていく。


まさか100Pかそこらの間に、ここまでバタバタと死んでいくとは。劇中に経過した年月で見ると5年以上の月日をかけてはいるんですが、なんだか因縁めいたものを感じずに入られません。


それにしても、各々の死に様がその生き方をよく物語ってますよね。生涯忠義の人だった関羽は、傷つき倒れたところを天下の名医に癒してもらうけど、傷がふさがり切らない内に戦場に出て敵に囚われてしまう。孫権に軍門に下るよう言われるものの、最後まで玄徳との桃園の誓いを貫き、打ち首。晩年、老いによる思考硬直のためか、ますます忠臣の苦言を受け入れなくなった曹操は、病に臥せ、関羽と同じ名医に診て貰う機会を得ながら、狭量さからそれを拒んで病死。人情を重んじ、人心掌握術に長けているけれど、自らが特に名将というわけでもない玄徳は、関羽の死に怒り、常にない積極さで戦争に臨むけれど、孔明成都に残してきたために大敗し、死亡。張飛は……兄の関羽と比べると、あんまりにあんまりな死に様。


んで、この巻では孔明の南蛮征伐も描かれてるわけですが、な、なんかここだけ毛色が違いますね。やたらコミカル。孔明が戦車を発明し、それでもって行った殺戮に涙し、趙雲に慰められるくだりは、今までの孔明像を考えるとちょっと違和感があったんですが、それだけ自分が作り出した兵器に戦いていたってことですかね。


三国志 南蛮」でぐぐったら呂布が南蛮王になって旗揚げするというSSが出てきて、思わず読み耽りそうになりました。源義経がチンギス・ハンでした、みたいな系譜の発想なのかな。