フリーダの世界 天になき星々の群れ/長谷敏司/角川スニーカー文庫

天になき星々の群れ―フリーダの世界 (角川文庫―角川スニーカー文庫)


暗殺者・フリーダは、任務を遂行するため潜入した辺境惑星で同い年の少女・アリスと同居することになる。純真な彼女に、フリーダはそれまでの自分を大きく揺さぶられる。


理想と現実。変わるものと変わらないもの。綺麗なもの汚いもの。戦争と平和。テーマとしてはそんな感じで、暗殺者として過酷な世界に生きてきた女の子が怖いまでに純粋無垢な存在に遭遇した時どうなるのか。また、その純粋無垢な存在は危険に遭遇した時、信念を押し通せるのか。どうして彼女がそこまでの信念を持っているか描写してないから、こっちとしては全くと言っていいほどアリスに感情移入できなかったんだけど、そこが逆にアリスの超然さを際立てています。必ずしも劇中でアリスが肯定されていないところを見ると、その辺りは作者の意図なのかなー。


娯楽分大盛りと作者自ら言う「円環少女」がデビュー作「楽園」、そしてこの「フリーダ」と違うのは設定したテーマを徹底的に突き詰めた話かどうかなんだな、と思いました。


しかし、文章は相変わらずバサバサ枝葉を切ってて読み辛いのがキツイです。これを味のある文という人の気持ちは分かる。分かるから、いまだにこの文章に慣れない自分が悔しい。「円環少女」は別の方向で読み辛かったし、もうこりゃ変えろと言われても変えられないんだろうなあ。 


……そういえばこれ、どっちが主題でどっちが副題?順番から言って「フリーダの世界」が主題なんだろうけど、ちょっと混乱します。どっちでも通りそうだ。シリーズ化するとしたら「フリーダの世界 ○○○」になったのかな。