吸血鬼ドラキュラ/ブラム・ストーカー 平井呈一訳/創元推理文庫

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)


吸血鬼だったらダイ・アモン、吸血姫だったら美夕が好きです。


弁理士のジョナサン・ハーカーは、トランシルヴァニア地方のドラキュラ伯爵の城に派遣される。彼は、なんと古くからそこに棲む吸血鬼だった。ジョナサンの仕事によって拠点を得たドラキュラ伯爵はロンドンに進出し、気に入った人間を毒牙にかけていく。彼は、ドラキュラのことを偶然知ったヴァン・ヘルシング教授らと対決することになる。


現代の吸血鬼ものの原点らしいけど、耽美小説でも恐怖小説でもなく、一人一人では弱い人間が力を合わせてより強い存在に立ち向かっていくという、至極真っ当な人間賛歌の物語でした。これって現代人故の感想なんですかねえ。それとも、私個人の資質の問題なんでしょうか。視点も人間側だし、伯爵が登場する場面がそもそも少ない。伯爵、特に美形でもないし。考え方が幼いとか言われてるし。もっとこう、超越的なイメージを抱いていたので、拍子抜けした、というのは否めません。それは即つまらなかった、というわけじゃないけど、期待してたのとはちょっと違ったかな。特に小難しい文章を使ってるわけではないけど、描写は丹念。人間が伯爵を追い詰めていく様も、知的ゲームっぽくて地味。伯爵に魅了された精神病患者や女性が、正気と狂気の狭間で葛藤する様は好きです。