GOSICK Ⅴ-ゴシック・ベルゼブブの頭蓋-/桜庭一樹/富士見ミステリー文庫

GOSICK(5) ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋― (富士見ミステリー文庫)


口絵の二つ目、もっとキャッキャウフフなシーンだと思ってたのに、騙されたー。


夏休みが終わり、新学期。聖マルグリッド学園のどこにも、ヴィクトリカの姿はなかった。聞けば、ブロワ侯爵の部下の人間が、彼女を「ベルゼブブの頭蓋」なる修道院に移送してしまったのだという。久城は、彼女を迎えに行くことを決意する。


今まで存在を匂わせていたキャラが何人か登場し、物語はにわかに緊迫感を増してきました。「エマ」「BBB」、そしてこれと、最近19-20世紀初頭の、新しい時代の波(近代科学文明)が古いもの(オカルト等)を駆逐する、みたいな話が多いですね。この作品に関してはもうちょっとうまいこと描写して欲しいとは思うけど、そういう対比は嫌いじゃないですよ。


……が、ばら撒かれた伏線ばかりが目について、せっかくいい材料を使ってるのに単品としての盛り上がりはイマイチだったかも。ヴィクトリカと久城の再会に至るまでの過程にも苦労も何もあったもんじゃないし、もうちょっと引っ張ってもよかったんじゃないかなあ。前後編だというなら、なおさら。見せ場はそれなりにあるんですけどねー。


あと、どうも桜庭一樹という人は、時々ネーミングセンスというか、単語の選び方が怪くなるのが気になります。文章の流れとか、ヴィクトリカの衣装を描写する時のそれは大好きなんですけどね。ふと、凄い違和感を感じることがあるんです。台詞も時々、なんだかわざとらしいし。これも個性といっていいのかな。んでも、いくらなんでも「ブラック・ヴィクトリカ」はないだろー。


余談。活字倶楽部のインタビューでこの人、「分析されるのは好き」といったような発言をしてまして。「ナチュラルにアレなファンを喜ばせるようなこと言うなー」などと思ったダメな私がいたんですが、はたしてどこまで分かってて言ってることやら。劇的な飛躍の年だった2005年の桜庭一樹もこれで撃ち納め。2006年は更なる飛躍の年になりますように。