空の中/有川浩/メディアワークス

空の中


日本航空業界が期待をかけていた試験機が二機、高度2万キロの試験飛行中に事故に遭った。原因不明のその事故を解決するため、プロジェクトに参加していた企業から調査委員が自衛隊岐阜基地に派遣されてくる。一方、試験機の機長の息子である斉木駿は、事故があった日、幼馴染の天野佳江と海辺でクラゲのような謎の生き物を拾っていた……。


第10回電撃ゲーム小説大賞<大賞>を受賞した有川浩がハードカバーに挑戦した本作。ファーストコンタクトものですね。受賞作である「塩の街」と比べても満足の行く出来でした。「塩の街」は非常に魅力的な設定を作っておきながら、どっちかというと現象に対した時の人々の心の動きを追うのがメインで、ネタの転がし方がイマイチだったけど、今回は話が設定に沿っていて、先の展開を予想するのが非常に面白かった。中盤、ディスカッションがちょっとうまく行き過ぎじゃないか、というところはあったけど。起伏の多い展開を期待している人には向かないかもしれません。


なんでハードカバーで出版されたかっていうのは一目瞭然、大人が子供をやりこめる(これで語弊があるなら、「諭す」で)話だから。逆の構図がメインの電撃文庫では、そら出しにくいですよ。「大人」の代表格で、劇中でやたら持ち上げられてる宮じいの説教も、いかにも大人が好みそうないたって「常識」的なもので、そんな大したものかなあ……?とちょっと感じてしまいました。「常識」が勝利するってのがここでは重要なんだろうけどね。

でも、ラノベはそれでは駄目なんです。「子供」は間違っていたとしても、それで世界を滅ぼしてしまったとしてもそれはしょうがない。というかそうであるべきなんです。だから、決して「大人」の説得に耳を傾けてはいけないのです。むしろ「大人」を踏み越えならなければならないのです。もし、間違ってしまった「子供」を正すとしても、それは「大人」ではなく「子供」でなければならないのです。例えば、恋愛と絡めて異性によって行われたり、友情と絡めて同性によって行われたりするわけです。「子供」至上主義の世界こそがラノベなのです。

http://d.hatena.ne.jp/ZUI/20050130#p1より


多分、実際にはここまで極端ではないと思いますけどね。ただ、大人と子どもというのが対比された場合、大体子どもが勝つっていうのはラノベのお約束ではあります。